公益社団法人日本柔道整復師会第53回北海道学術大会/第45回東北学術大会福島大会開催
2026年7月18日(土)・19日(日)の2日間、郡山ビューホテルアネックス(福島県郡山市)において「公益社団法人日本柔道整復師会第53回北海道学術大会/第45回東北学術大会福島大会」が開催された。


本大会は、主管である公益社団法人福島県柔道整復師会・内藤良博会長の〝本大会は、北海道と東北の合同という新たな装いの学術大会となっている。この大会が皆様にとって実り多い機会となることを期待している〟との開会の辞により開幕。

主催である公益社団法人日本柔道整復師会・長尾淳彦会長は〝今年度より、学術大会のブロック編成が変更になった。北海道・東北は対象地域が広く集まるのも苦労する部分はあるが、様々な試みを取り入れて、より良い学術大会になるよう尽力していきたい。本大会の準備にあたられた福島県柔道整復師会の皆様をはじめ関係者の皆様には厚く御礼申し上げる。柔道整復業が今後も国民のために貢献していくために、この学術大会で学んだことを明日からの診療にどう活かすか。本大会には日本柔道整復師会の役員も多く参加している。各県の先生方と懇親を深めるとともに、積極的に意見交換をしていただきたい〟と述べた。

続いて、北海道ブロック会・高山訓正会長は〝東北ブロックと北海道ブロックの合同学術大会ということで範囲がとても広く、参集できるのかと心配していたところだが問題なく予定していた全員が出席することができた。一堂に会して学術大会を行うことはこれからの生活の糧となるだろう。この2日間が最新の知見を共有する場であることだけでなく、ブロックを超えた友好が芽生えることを祈念してやまない〟と挨拶。

東北ブロック会・櫻田裕会長は〝東北ブロック・北海道ブロックの記念すべき第一回目の学術大会ということで、こうして合同で研鑽の場を設けることができるのは日本柔道整復師会のしっかりとした体制あってのことだと感じている。来年は北海道で開催となるが、東北ブロック・北海道ブロック双方の学術担当の先生方と綿密に情報交換を行い、運営方法を模索しながらより良い学術大会にしていきたい〟とした。
日整 学術教育部からのお知らせ
「匠の技 伝承」プロジェクトと柔整施術のエビデンス
公益社団法人日本柔道整復師会 学術教育部長
徳山健司氏

【要旨】
従来の柔道整復施術は、主に施術者の経験や勘(アート)に依存して発展してきた。しかし、現代医療において科学的根拠に基づいた施術(サイエンス)へ移行することが強く求められている。
理学療法業界では、厚生労働省から「ガイドラインのない学会に対しては強くガイドライン作成を要請する」、「ガイドラインのない治療法は診療報報酬の対象になり得ない」という厳しい方針が示されている。実際に診療報酬改定には費用対効果判定が導入されつつあり、柔道整復業界が今後も存続していくためには、柔道整復師自らが科学的エビデンスを構築し、診療ガイドラインを作成・運用することが不可欠だ。
科学的根拠を持った提言やガイドラインの作成には、以下の8つのステップが必要となる。
①目的と対象の明確化、②作成チームの結成、③クリニカル・クエスチョンの設定、④文献検索とエビデンスの収集、⑤エビデンスの評価、⑥推奨グレードの作成、⑦レビューと外部評価、⑧公開・教育(定期的な更新)
例えば「肉離れに対して冷やすべきか、温めるべきか」といった疑問をクリニカル・クエスチョンとして設定したとする。従来の常識であったRICE処置に対しては、現在さまざまな科学的検証が行われているが、RICE処置の提唱者であるDr. Gabe Mrikin自身が「アイシングが治癒を早める科学的根拠はなく、むしろ治癒を遅らせる可能性がある」と示唆している。2020年には、神戸大学大学院の荒川准教授(当時)が「アイシングをすると損傷した筋細胞の中に、炎症細胞があまり入っていかないことがわかった」と報告している。しかしその後、「軽微な筋損傷に対するアイシングは、筋損傷の再生を促進する」との論文も発表されており、「回復を遅らせる」という報告と「軽微な筋損傷には有効である」という報告の双方が存在する。
このように、最新の論文や信頼性の高いデータベース(PubMed、Cochrane Libraryなど)からランダム化比較試験やシステマティックレビューを検索し、客観的に検証していく姿勢が求められる。
支給基準の見直しは、行政や保険者に委ねるのではなく、柔道整復師が自らエビデンスを示して進めていかなければならない。科学的根拠を持って論じることを学ぶことで、柔道整復医療を次の世代へ継承し、若い施術者が安心して働ける環境を作っていきたい。
エコーを柔道整復師の手に
公益社団法人日本柔道整復師会 学術教育部
小野博道氏

【要旨】
日本柔道整復師会学術教育部では、2021年から「匠の技 伝承」プロジェクトを実施している。伝統的な技術の継承と、超音波観察装置という新しい技術の発展を兼ね備えた「温故知新」の取り組みにより、柔道整復師の発展を目指している。
柔道整復師がエコーを使用する目的は、患者の安全と医療の安全の確保にある。近年、柔道整復師国家試験でもエコーに関する問題が出題されており、これから現場に出る学生にとってエコーは身近な存在となっている。外傷の初期スクリーニング能力が問われる時代において、触診や徒手検査に加え、視覚的に評価するエコーは不可欠となる。また、施術の均一化、コンプライアンスの遵守、不正請求の抑止力としても機能する。特に患者へのインフォームド・コンセントにおいて、損傷部位を可視化して根拠を示すことは通院の継続につながる。将来的な医師との連携においても、共通言語としてエコーが必要となる。
業界の衰退を防ぐため、現在、柔道整復師版の施術ガイドライン作成を進めている。その準備調査として、全国の会員を対象に足関節捻挫に関するレセプト調査を実施した。足関節捻挫は柔道整復師が扱う機会が多い外傷であるが、前距腓靭帯損傷やその複合損傷の発生割合に関する全国的な調査は過去に行われていなかった。今回の調査は、前距腓靭帯損傷の実態を明らかにし、ガイドライン作成の基礎資料とすることを目的とした。調査は3月から5月にかけて、Googleフォームを用いて実施した。3ヶ月間で1,808名の回答があり、対象となった総レセプト枚数16万2,576枚のうち、足関節捻挫の請求は約1万2,000件(全体の約7.4%)であった。さらに、足関節捻挫の請求の内、82.8%が前距腓靭帯に関連したものだった。この結果により、日常生活で遭遇する足関節捻挫の8割以上で前距腓靭帯が関与していることが明らかとなり、ガイドライン作成のための事前準備が整った。現在は、エコー画像を資料として収集する段階に移行している。
今後の新たな取り組みとして、機能回復のための超音波画像評価を行う「J-RUSI(Judo therapy Rehabilitation Ultrasound Imaging)」の立ち上げを提案する。これは「見るためのエコー」から「適切な運動療法を選択するためのエコー」への進化を目指すものである。エコーを用いてトレーニングの効果を視覚的にフィードバックすることで、患者の運動学習を促進できる。このような取り組みは自費診療の可能性を広げるものである。今後もデータを集積し、ガイドラインの作成を加速させていく。
ワークショップ




特別講演
「アスリートを支える脊椎疾患マネジメント―腰椎分離症から黄色靭帯骨化症まで―」
公立大学法人福島県立医科大学医学部
スポーツ医学講座特任教授/
脊椎脊髄外科アカデミー准教授
加藤 欽志氏
【要旨】
腰痛患者に対する診察の進め方

腰背部痛はまず「外傷性」か「非外傷性」に分類する。外傷性腰痛は画像検査を優先し、神経症状を伴う場合は緊急の手術対応が必要となる。最近ではアスリートに対する手術の場合は、2cmぐらいの傷を何箇所か作り、ネジを入れて固定し、骨癒合したあとに金属を抜去するという低侵襲固定術を行う場合もある。一方、直達外力等で起こる「横突起骨折」は保存療法の適応が多い。アスリートの場合は特に体幹側屈・回旋時の腰痛消失、局所圧痛の消失、体幹トレーニングの安定化などを確認して段階的に復帰を判断する。競技復帰にあたっては、安静期間、コルセット使用期間、ジョギングなどの軽運動開始の時期、全体合流・試合復帰の時期という4要素について、症例ごとにデータを蓄積していくことが重要だ。
非外傷性腰痛では危険信号(レッドフラッグ)の有無を確認する。危険信号には、20歳未満の発症(強直性脊椎炎の見逃し防止や、半数を占める分離症等の確認のため画像検査を推奨)、時間や活動性に関係のない腰痛(夜間痛や安静時痛、楽な姿勢がない状態)、原因不明の体重減少、膀胱直腸障害を伴う広範囲の神経症状、発熱などが該当する。これらはがんの骨転移や感染症、腫瘍(夜間痛に鎮痛薬が著効する類骨骨腫など)の可能性があるため、定期的に繰り返しチェックして見逃さないことが不可欠である。
レッドフラッグを除外して残るのが通常の腰痛で、神経症状の有無で分けられる。病態の把握には問診が不可欠だ。痛みの部位・症状、発症時期と疼痛の継続期間、受傷起点と誘因、疼痛が増悪する姿勢、関連症状(特に下肢)の有無、過去に同様の症状を経験したことがあるかなどは必ず確認する。スポーツ診療としては選手の学年、チーム内の立場、今後の試合や目標なども含めて聞き取ることで信頼関係にもつながる。
腰椎分離症のマネジメント
腰椎分離症は小児期〜思春期に椎弓・関節突起間部に生じる疲労骨折で、男子に多く見られる。骨折の進行中は痛むが、完全に分離すると痛くなくなる。一方で、分離すべり症へ移行すると成人期に腰痛のリスクが高まるため、特に年齢が低い場合は骨癒合を目指す治療が重要となる。ただし分離症は年齢が低いほど、また女子、L5、潜在性二分脊椎の合併などで骨癒合率が低下する特徴がある。発生要因として伸展・回旋動作に加え、側屈動作も強い負荷となる。中高生野球選手のデータでは、腰痛が4週間以上継続している、ランニングに支障がある、片側の傍脊柱筋での腰痛発生、局所的な圧痛の4つを満たすと高い確率で分離症であった。
分離症の場合、進行すればするほど骨癒合率は低下し、癒合にかかる時間も伸びてしまうため早期発見が重要となる。硬性コルセットによる治療では、初期の完全安静(ストレッチのみ)の期間に対し、その2倍程度の期間をかけて段階的に復帰準備を進める。
分離症の選手に対するマネジメントでは、①隣接部位(股関節や胸椎)の可動性改善、②体幹の安定化、③運動制御の獲得、④問題動作の特定と修正の4つがポイントとなる。なお、コルセット装着中の体重増加を恐れて食事制限をし、栄養不足で骨癒合が進まないケースもある。
プロ野球選手の腰椎分離症
私はこれまで診療したすべてのプロ野球選手に対し腰椎のCTとMRIを確認しているが、その約3割に分離症が認められた。しかし入団時に分離症があっても5年間の獲得年俸や腰痛による競技離脱率に有意差はなかった。分離症を持つプロ選手で1ヶ月以上の競技離脱につながった主な要因は、分離症そのものよりも、隣接する椎間板への負荷によるヘルニアの発症であった。
胸椎黄色靭帯骨化症
胸椎黄色靭帯骨化症は、脊柱管の背側に存在する黄色靭帯が異常に肥厚し、骨化して神経を圧迫する原因不明の疾患で、日本人・東アジア人に多く見られる。一般的には中高年での発症が多く、30歳未満で手術になる例は極めて稀である。力学的負荷がかかりやすい胸腰椎移行部(胸椎10・11番付近)に多く、プロ野球投手にも散見される。無症状のケースもあるが、脊髄の後索路が圧迫されることで、初期症状としてバランス感覚低下が現れる。
治療では、神経にダメージを与えない超音波メスやコンピューターナビゲーションシステム、内視鏡などを用いて安全かつ精密に骨化部を削る手術を行う。術後は歩行やフォーム指導からリハビリを開始し、バランス改善(サッカーボール使用やピラティス等)や段階的な投球練習を経て、約3〜4ヶ月で二軍、5〜6ヶ月で一軍復帰を目指す。
アスリートの胸椎黄色靭帯骨化症は大半が野球選手だが、症状が多彩で診断がかなり難しい。通常、胸椎黄色靭帯骨化症は両下肢のしびれが出現するが、プロ野球選手の胸椎黄色靭帯骨化症は片側どちらかのしびれを訴えている場合が多く、診断の落とし穴になっている。早期診断が非常に重要である。
研究発表
- 北海道網走市における介護予防事業の効果 〜要介護認定率の経年変化からの考察〜北海道 山﨑順造会員
- 固定管理の徹底により良好な経過を得た腱性マレットフィンガーでの保存療法の有用性宮城県 櫻本和夫会員
- 柔道整復師がコミュニケーション(医療面接)を活かした症例岩手県 藤村達郎会員
- 柔道競技における応急・救護活動について青森県 竹原愛人会員・谷川弘会員・苫米地一弘会員
- 長期経過をたどった膝蓋骨脱臼後不安定症の一例秋田県 飯塚英貴会員
- 肩関節拘縮に対するリハビリテーションについて
炎症・防御性収縮・筋スパズムに着目して福島県 佐久間雄大会員 - 上肢(水平軸)の過伸展による不均衡が下肢(垂直軸)に及ぼす影響福島県 小林洋一会員
実技発表
- 超音波治療器と手関節のモビリゼーションを併用する意義宮城県 藤井裕文会員
- ソフトキャストを利用した膝蓋骨不全骨折固定法山形県 原田淳会員
学生発表
- 上腕骨顆上伸展型骨折に対する従来の認識への疑問と文献的考察仙台医健・スポーツ専門学校
高野恋奈氏 松本真子氏
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