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第21回NPO法人JATAC全国活動報告会を開催!

トピック

第21回NPO法人JATAC全国活動報告会が平成28年7月17・18日に東京海洋大学越中島キャンパスにおいて開催され第1日目を取材、今回は午後の部を掲載します。

『アスレティックトレーナーに必要な各種体幹部トレーニングの実践講義(実技)』

帝京大学スポーツ医療学部教授(JATAC理事)・蛭間栄介氏

腰椎を安定させるためにどういう形で体幹は構成されているのか。腰部、背部、胸部あたりや頸部の痛みに分けていくと、背部痛は結構起こり格闘技は少ない傾向がある。胸部、胸椎のあたりをみていくと水泳やローラースケートが結構多い。子どもの腰部の痛みはどのスポーツにおいてもみられる。腰痛は加齢とともに増加し、スポーツ選手は10~20代の前半によくみられる。腰痛は、脊椎分離症が一番多いと言われているが必ず分離だから痛みが出ているという訳ではなく、たまたま腰が痛いといって分離になっていたというのがある。臨床的な症状とは必ずしも一致しない、ということはよくある。そういう意味でいろいろな治療法があるのではないかと思われるし、臨床症状の改善が患者さんのQOLの向上に最も効果的であり、痛みが軽減することが一番大切ではないかと思う。

急性の腰痛の方たちは85%が非特異的な腰痛であると言われている。そうした中で腰部を支配している筋肉の数は多い、どの筋肉を鍛えたら良いのか、どの筋肉が影響を及ぼしているのかを明らかにしなければいけない。腰椎の安定システムには、筋肉をコントロールしている神経系の制御システム(脊柱についている筋によるサポート)、多動化のシステム(骨・関節・靭帯など多動的なシステム)、これらが上手く作動することによって脊柱自体、或いは腰部であれば腰椎の安定性が担保されると言われている。一般的に各椎体の分節的な安定を高めるために働いているローカル筋と腰椎に直接付着はしていないが体幹を支えているグローバル筋、2つの筋肉システムに分けられる。(中略)

トレーニング方法については、グローバル筋とローカル筋のトレーニングを考えなければいけない。グローバル筋のトレーニングは、腹筋のトレーニングで、最近グローバル筋が最も鍛えられるのはウエイトトレーニングであると言われている。スクワットやレッグランニングはグローバル筋にも重要なトレーニングと言われている。ただ単に体幹を鍛えるだけではなく、スクワット等、下半身を使うトレーニング、或いはバランスが崩れるために体幹をしっかり使わなければいけないし、トレーニングを行うことで体幹部の筋肉も鍛えられるといわれている。逆にローカル筋をトレーニングする場合に重要なことは、体幹の屈曲速度の増加により腹斜筋よりも腹側筋の働きが後背部に増加している。ゆっくりとした動作自体を行いながらやっていく。或いは周りは動かすが体幹は動かさないようにする形でのトレーニングによってローカル筋は鍛えられると言われている。実際に動かすのではなくイメージトレーニングから入っていく。神経と筋を同時にトレーニングしていく。体の様々な部位の筋肉をエキセントリックに収縮させていく。体のイメージトレーニングがしっかりできるということは、脳でしっかりイメージしていくこと自体が筋を上手く働かせていくことに繋がっていると考えられる。上肢と下肢の動きによって体幹への刺激をより高めていく。

実際のパフォーマンス、ボールを使ったエクササイズ、マットを使ったものが最近ではよく行われている。いろんなピラテスエクササイズ*があるが、代表的・初級的なピラテスで足や手を動かしていくことによって、その時にその姿勢を維持していくものです。一番大切なことは体幹を意識するということ、そこをしっかり意識しないと体幹のトレーニングになっていかない。しっかりドローインした状態で負荷をかけ呼吸をしながら手足を動かす。今は各種トレーニング方法が出てきて、不安定にさせる方法はいろいろ出ています。出来れば1つの方法に対しての専門家意識を先ず持ってもらいたい等話し、参加者全員に実技指導も行った。

シンポジウム「2020年東京オリンピックのJATACの取り組みはいかに?」

昨年に引き続き2020東京オリンピック・パラリンピックに向けたシンポジウムが行われ、原和正氏(JATAC副理事長)、吉塚亮一氏(JATAC理事、福岡支部)、田中清久氏(JATAC理事、滋賀支部)、蛭間栄介氏(JATAC理事、帝京大学スポーツ医療学部教授)ら4名のシンポジスト、司会は原和正氏が務めた。

シンポジウム

シンポジウム開催にあたって、司会の原氏から〝2020年7月24日から2週間、選手村が開催するのはその2週間前で約1か月間オリンピックは開催されます。パラリンピックがその1か月後ですから、オリンピック終了後の翌日8月25日から9月6日まで開村になります。JATACとしてどういう風に取り組んでいくのかについてシンポジウムを開催します〟と話した。

吉塚氏

吉塚氏は〝参加国197カ国、参加人数が約11060名という規模のオリンピックが開催される予定です。オリンピックにおいてJATACのATの認知度を向上させる絶好のビッグイベントではないかと考えます。課題は、JATACとしての参加協力は可能か?参加協力するためには、多くの時間と労力が必要です。

2020年の東京オリンピックに向かって関わるスポーツ関連事業の予算が今年300億円を超えオリンピック開催年度まで右肩上がりでどんどん上がっていきます。ATCとして参加できるのかを考えた時にATは日体協のAT、NATAのATC,と確実に競合します。鍼灸マッサージはいろいろな部分で活動しています。パラリンピックでは理学療法士の団体は現在動いています。JATACとして何が出来るのかということを考えていかなければいけない。JATACの強みは何かを考えた時に会員の殆どが医療資格をバックボーンにしたATであることは他の団体にはない強みであり、他の団体よりもフットワークが軽く機動性を持っていると考えられます。

実際に参入するとなった時にオリンピックに参加するアスリート達をターゲットにするのか。パラリンピックに参加するアスリートたちをターゲットにするのか。スタッフたちに対してのコンディショニングを行うのか。数は力です。我々九州や地方の会員が旗を振ることは難しいため、やはりJATAC関東支部の皆さん達において数は力なりで動くのが良いと思います。オリンピックにおいて全てアスリートに帯同するようなトレーナー活動を行うことが仕事ではないのではないか。発展途上国の方、トレーナーが居ない国の人たちへの可能性はあるのではないかと考えます。いろんな意味でJATACのATCが活動できる可能性は期待できると思います。今後50年、東京オリンピックの様なチャンスはありません。既存のJATACのメンバー、役員全てが本気でオリンピックに参加したい意志があるのであれば、早期決定をする必要があります。全国JATACのネットワークシステムの構築を行う必要があると考えます〟等提言を行った。

田中氏

田中氏は〝スポーツには様々な側面があり、するスポーツ・観るスポーツ・支えるスポーツ・育てるスポーツがあり、支えるが我々の活動領域です。滋賀県は8年後に国体と全国大会を控えており、県でもスポーツ課を新設して、県の体協と障害者スポーツ協会が一体となって、パラスポーツにチャレンジしたい人達や支えていく人達を今の人員の5倍化計画を立てています。どこの地域もパラスポーツを支える人材が少ない。

私は第1期でJATACに入りました。1999年に滋賀県の障害者協会に直接出向いて意義を説明して、こういう資格を持ちながらスポーツ医科学を勉強してスポーツのサポートをしていくことを話しました。まず協力員として参加してください、そのためには地域で開催している初級の指導員認定講座を受けるようにと言われ、それを受けて2000年3月に初級スポーツ指導員の認定を受けて障害者スポーツ協会が行っている陸上競技、フライングディスク、水泳、卓球、アーチェリー、夫々の大会に補助係員として参画しました。各大会にドクター派遣はないので、急性の外傷対応については日赤から派遣されている看護師さんと協力しながら救護をしました。パラリンピックは競技スポーツと少し異なり障害者の社会参加の推進、国民の理解を深めるという理念に則り行われていますが、昨今、競技レベルがかなり向上して各県とも競技性がかなり重要視され厳しい選手選考になっています。パラリンピックを担当しているのはジャパラですが、日障協の傘下には視力障害や聴覚障害も含めて63団体あります。(中略)

日本障害者スポーツ協会のHP、今年の3月の時点で指導者の登録者数、各県政令都市で、スポーツドクターが全国で331名、スポーツトレーナーは113名。まだまだ各県0人というところもあり滋賀県も0です。どんどん増やしたいという考えが日障協もあるようです。日障協ではATという名称は使っていません。障害者スポーツトレーナーという公認の養成講座を開いていますが中々ハードルが高い。アスリートの競技力向上へ我々ATの技量そのものを上げていかなければと思いますし、底辺の部分を拡大していく、裾野を広げていくという意味ではATCの増員、活動域を拡大して認知を高めていってもらう。木から森へ繋げていくという意味では、関連業種ドクターやPT、或いは薬剤師など関連職種たちの連携、強化していくような活動が必要だと思います。ATを求めている人や社会がありますので、自らATを売り込んで柔整の独自性、有意性を保ちつつ他の関連職種と共通言語で活動できていくことが必要です。社会への貢献と責任、我々療養費を扱えるという恩恵を受けていますが、だからこそ社会への貢献と還元を目指していかなければと思っています〟等、提言した。

蛭間氏

蛭間氏は〝長野オリンピックの時に原先生とJATACの事務局長をしており、長野のJATACトレーナーの方達と一緒に1カ月間オリンピックの選手村に入って、一緒にトレーナーとして仕事をさせて頂いた。長野オリンピックは72か国3200人近くの選手役員が参加。選手村には2500人位が滞在し開村の前、23日から閉村される22日までの1か月間大学に休みを頂いて参加しました。全てのチームがトレーナーを連れてきている訳ではありません。トレーナーがいない或いはメディカルスタッフがいない国の方達もいますので、そういう方達に対してサポート、ケアをするということで実はこれは長野オリンピック委員会が特別機関として作ったものの1つでした。

我々が長野オリンピックの選手村で行うのはテーピング、障害外傷のチェック、トリートメント、医師との連携等をメインに行いました。トレーナールームシートを英語で作り、私が確認をして、必要があればメディカルルームに行ってもらうようにしました。実際に選手、コーチ、監督、或いはメデイカルスタッフに対してどういうことをどういう目的で行うのか、実際どういう状況なのかを全部説明してインフォームドコンセントをとった上で、トリートメントに入りました。選手は144名、女性が70名、合計214名。その他スタッフ、役員、合わせて55名。年齢は選手は20歳以下が24名。一番多かったのは21~30歳位、多くの国に利用していただいてカザフスタン、日本、カナダ、アメリカ、スウェーデン、ハンガリーなど、一番多かったのはカザフスタンの24名。種目は、ボブスレー、フィギュアスケート、アイスホッケー、スピードスケート、ノルディック、多くの種目の選手達が来られ、腰背部、肩、大腿等下半身が多かった。アンケートにかける時間がないので簡単な質問のアンケートを行い、満足度、治療、サポートの仕方について実際どうだったかを確認。どの場合でも、ほぼ満足、大満足・満足を合わせると85%~95%を超えている。

私の経験等を踏まえて国際大会におけるAT活動の留意点は、インフォームドコンセントの必要性で世界共通の医療・治療・サポートレベルに基づいて行う。トリートメントシートの作成、言語力、共通言語が英語、必要な単語は覚えたほうが良い。イエス、ノーを明確にする。出来ること、出来ないこと、すること、しないことをしっかり選手、医療の方に伝えることが大切です。我々に出来ることには限界がありますので、メディカルセンターとの協力関係をしっかり得て行っていかなければいけない。また選手以外のサポートメンバーとのコミュニケーションをしっかりとる、選手に対してはどういうことを行っているかを説明し、それによってどういう結果が得られるというコミュニケーションをしっかりとることが重要である〟と締め括った。

原氏

原氏は〝丁度4年後、パラリンピック・オリンピックにJATACとしてどちらに参加するのか。オリンピックという華やかな世界には出たいけれど、勉強はイヤだというのであれば、それは参加する資格がないとみられても仕様がない。長野は血の滲むような努力をオリンピック前にしました。参加するからには勉強しなければ相手の体を診る資格はないというのが私の信念です。参画までのキーワードとして、TOCOG(東京オリンピック組織委員会の略称)との接触:担当部署の確認、・当会のPR資料の作成、・参加形態:オフィシャル・活動形態:医療・AT・アプローチ:TOCOG組織委員会担当部署・活動方法:競技会場・選手村・選手村外、・ボランティア:登録(18年夏開始)・フィットネスセンター:コンディショニング、・医療棟:救護、治療、コンディショニング、・研修:メディカル・フィジカルチェックの統一等である。

医者もPTも看護師も居るところに柔道整復師が入っていく場所は殆どない。もしやるとしたら、競技会場でしょう。従ってATとして、柔道整復師というバックボーン、医療にたずさわっているATの資格を持っているATだということを前面に出すべきだと思います。競技会場でやるのか、それとも長野みたいに選手村でやりたいのか、もしそこで出来なかったら、選手村以外の何所かで行うのか。皆さんが共通認識をもたなければダメだということです。活動スタイルは3つありますが、夫々の体制を如何整えるのか。

東京オリンピック組織委員会のHPを見るとボランティアの登録は2年後の2018年からです。組織委員会と密に連絡をとってやっていくことが大事です。何はともあれ、アスリートファーストで、私ども組織のPRが出来る資料を携えて取り組んでいくべきと思います。口だけではなく行動で起こさないとダメです。オリンピック参画は、JATACのATCの実力発揮の場であり、業態周知の場です。これだけ知識と技能を持ってますと堂々と医者・PT・体育指導者・運動生理学者・アスリートにも説明ができて評価をしてトリートメントが出来るかどうかが問われています。其処で堂々とやれれば社会的評価を上げ、科学として認めてもらえます〟等、話した。

その後会場との意見交換ではJATAC理事・岩本氏から〝大部話も煮詰まってきていますので、参画するのかしないのかを決めて理事会なり総会で機関決定をして、そこからスタートする。但し、その時点からの準備では遅いので、もう一度計画案を練って、来年の4月の理事会に出して頂く形でプランを立てて頂くことをお願いしたい〟。JATAC理事長・片岡氏から〝国際的な大会になればなるほど政治的な配慮が多くなるのは事実です。小野会長も実績ということをよく仰っていました。出来るだけ早く今日のレポートを作成刊行して、いろいろなところに配布してJATACのこれまでの実績をアピールすべきです。我々は20年間という歴史を持っています。素晴らしい経験ですからそれを世の中にアピールしていくしかないと思います〟等、多数の意見が出された。

最後に原氏から〝オリンピックにだけ参加してもらってもダメなんです。オリンピックの前に皆さんのやることがいっぱいあります。各地域でスポーツ界を支えるということです。地域で積極的にスポーツのお手伝いをすることを実践してください。オリンピックに参画したその後をどうするかを真剣に考えて、そこから先をどう描くかということも大事なので柔道整復師という資格を持ったATとして如何活かしていくかを考えてもらわなければなりません。是非そこのところを頭に入れてオリンピックに参画して頂ければ有難いと思います〟等述べ終了した。          

*ピラテスエクササイズは、第一次世界大戦中に傷病兵を回復させる目的で、ヨーゼフ・ピィラティスが考案した運動である。主に、ダンサーやバレリーナが、体力向上やテクニックの向上、障害予防やリハビリに利用している。

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