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武見敬三議員と塩崎恭久厚生労働大臣との勉強会 開催

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平成28年5月12日(木)午後6時半より、東京九段グランドパレスダイヤモンドルームにて敬人会夕食勉強会が開催され、東京都病院協会会長・河北博文氏による開会の辞、武見敬三連合会会長・東京都医師会会長・尾崎治夫氏、日本医師会会長・横倉義武氏、(公社)日本歯科医師会会長・堀憲郎氏、(公社)日本薬剤師会会長・山本信夫氏の挨拶があった。

武見敬三議員と塩崎恭久厚生労働大臣との勉強会 開催

「21世紀成熟国家日本の社会保障」と題し、厚生労働大臣・塩崎恭久氏と武見敬三先生との日本の方向性を導く勉強会

武見議員

武見議員:
今の我が国の厚生労働行政は正に時代を画する重大な転機の中にあると思います。その中であらためて未来に目標を明確に設定し、その設定した未来に対してどのように今の時点から計画を組み立ててそのあるべき未来を実現するかというアプローチを見事にやっておられるのが塩崎厚生労働大臣です。今日は特別に資料集を皆様に配布しても良いと仰って頂きました。塩崎大臣、始める前に一言お願いします。

塩崎大臣

塩崎厚生労働大臣(以下、敬称略):
武見先生がレベルの高い政治をやって来られた。これから益々武見先生のお力が我が国にとっても世界にとっても必要な時がやってきています。これまで以上にご支援頂くよう私からも申し上げたい。正直私は元日本銀行ですから経済政策やコーポレート・ガバナンスのようなことをメインにやってきましたが、これから社会保障こそが一番ど真ん中で大事な政治課題であると思っています。そういう意味で厚生労働省が実質的な司令塔にならなければならないと思っており、このことが実は武見先生もずっと思っておられていて副大臣の時にそういう事例をされて、私はいろいろと教えをこいながら彼と一緒にやってきましたし、寧ろ彼の言う通りにやってきたと言ったほうが良いかもしれませんが、いろいろお話をさせて頂ければと思っています。

武見:
21世紀の成熟した国としての日本の社会保障を考えるという場合に我が国の社会の在り方について大きく戦後確定した時代を思い起こす必要があります。岸内閣の時には経済10カ年計画の目的をただ単に経済成長だけではなく、国民の所得を増加することも10カ年計画の目標にし、それを完成させたのが池田内閣の所得倍増計画であり、1958年、健康保険法の改正や国民健康保険法の改正を行い、1961年に国民皆保険制度と国民皆年金制度が同時に達成されました。経済政策、社会保障政策夫々が相乗効果をもって高度経済成長した時代であり、自民党が長い期間安定した政党として歴史的役割を担い続けることが出来た。問題はこれからであり、我が国の経済財政と社会保障制度全体を壮観した時に一つの耐用年数が終わり、改めて我が国の21世紀の将来像を再設定した上で新しい政策を取りまとめる時代に入った。
その中で安倍内閣は当初、「3本の矢」の目的はあくまでも経済財政、金融、規制改革といった成長戦略であったが、「新しい3本の矢」は、単に経済分野だけではなく、少子化対策或いは高齢化対策も全て含めて分野横断型の政策パッケージにしたと思います。「新3本の矢」の中で人口政策が我が国の政策の中で極めて重要視され再浮上している。その担い手はまさに厚生労働省であり厚生労働大臣だということになります。

塩崎:
実は今年の1月にダボス会議に行って参りました時に家族の問題についてのセッションがあり、これから社会も企業もどういう風にケアをしていったらよいかという話であると。日本が呼ばれるのはやはり高齢化だろうとして、人口・労働人口・少子化・出生率はどうなっているかの4つをG7で比較すると如何なるか作ってみようと、出来たのが、私の名前が入っているお手元の資料です。
見ておわかりの通り、日本だけが4つともみな厳しい状況、つまり人口は減り、労働人口も減り、高齢化は先進国の中で一番ハイペースで進み、少子化もほぼイタリア・ドイツと並んでいる。アメリカは、人口は伸びて出生率も2に近い。他の国も大なり小なり似てきているがアメリカだけちょっと変わった国と言っても良いほど条件が違う。ドイツも人口は少し増えた時もあるが少し減っている。しかし労働人口は増えている。つまり外国人が入ってきている。世界は日本が如何にこの人口問題を克服して、なおかつ其処に住んでいる人たちが幸せになれるかと。まさに最後の砦は一人一人の家庭での暮らし、ここに辿り着く訳で、社会保障です。
武見先生が言われるように経済成長の中で皆保険・皆年金を達成してみんなの幸せを確保してきた。「三丁目の夕日」という映画、あの頃は住んでいる家もあまり綺麗ではなかったりするけれども、東京タワーが建設されたと同じように自分の人生も自分の暮らしも必ずよくなるという期待と希望をもっていた時代が長く続いたが、今すっかり条件が変わりました。一番変わったのは経済です。しかし社会保障は賄っていかなければならない。実は社会保障だけ伸びていて後は減っている中でやっていますから、中々豊かなことは出来ない形になっている。
そこで出てきたのが「3本の矢」で、2年位頑張ってきてそれなりにベースは出来た。去年の9月に安倍総理は〝一億総活躍社会づくりをする〟と言いました。まだまだあまり理解をされていない。我々もっと説明しなければいけないと思って、ことあるごとに申し上げているが、日本の総理で初めて人口問題に取り組むということが1億総活躍社会をつくる。先ず人口減少を1億人で留める。放っておけば2040年位迄に8千万人位になってしまう。それを止めるということが第一のメッセージ。経済財政最優先は変わらない。社会保障の財源は、1つは保険料であり、もう1つは税で、もう1つは自己負担の3つ。これは政府が払ってくれる訳でも何でもない。皆さんか企業が払ってくれる。企業も儲からずに赤字ばっかり出している、皆さんの給料が減っている、そんな中で良い社会保障が出来る訳がない。まして高齢化、少子化を前提とした中で社会保障で満足して人生を全うできる訳がない。ということは、この国のつくりも何もかも全部もう一回やり直そうというくらいのことをやろうとしているのが1億総活躍づくりであり、今の私たちのやらなければいけないことだろうと思います。
目標は、一人一人どんなに弱い立場であっても男性も女性も高齢者も若い人も、障害があってもなくても病気をもっていても持っていなくても、失敗した人でも成功し続けている人でもとにかくみんな夫々の能力いっぱい頑張れるような国にしていこうということです。

武見:
『一億総活躍社会』が、まさに今話された社会の在り様を実現しようとしている。高齢化を少しでも緩和させるための少子化対策、そして若者への投資が重要視され、「新3本の矢」に組み込まれているのが大きな特徴です。一定の高齢化が進もうとも、この国の社会のダイナミズム、経済のダイナミズムをどの様に維持し、発展させることが出来るかを考えていかなければなりません。その一つの鍵が労働生産性です。
労働生産人口は15歳から65歳までと凡そ決められてきました。しかしながら65歳という線引きは確実にその意味を失い始めています。健康な長寿社会を実現していけばいくほど65歳という設定の仕方に大きな課題が出てきます。高齢化社会の中で健康寿命を延ばすほうに向けて保健医療政策全体を如何にパラダイムシフトさせていくか。健康な高齢者には年齢に関係なく社会の中で労働生産性を高める活動を引き続きやって頂く雇用機会を社会の中で維持し発展させていく仕組みが我が国の労働行政の中で求められてくると思いますが。

塩崎:
安倍総理が施政方針演説をした中で、同一労働同一賃金に踏み込むと言った。今回「1億総活躍プラン」を出しますが、その中にも欧州並みに非正規労働者の給料を上げることを目指すと書きます。安倍内閣最大のチャレンジは「働き方改革」だということを既に言っています。様々な形でみんなで働いて頂くことが社会全体を元気にするということです。高齢者であろうとも女性で子育てしていても或いは子育てが終わって又働きたいと、いろんな形で働いてそれがちゃんと評価をされ、正規の社員かそうでないかで差別をされない国に変えましょうという、かなりでっかいことを総理は言い始めていて、実は「新3本の矢」の1番目は強い経済ですがそのど真ん中にあるのが「働き方改革」です。同一労働同一賃金というのは一つのコンセプトとして、夫々のニーズにあった働き方が出来る、そしてそれをキチッと評価をしてくれる国に変えていこうとしているのが今です。そのためにはやはり元気でないと働けません。
どうやって健康を守り、病気にならないように予防し、仮に病気になっても重症化をくい止めて又元気になって頂く。介護も同じです。要介護度がよくなるようにしたほうが良い。そういうことを既にやっている所があって、和光市と大分県は、要介護度が改善をしている。いってみれば保険者として、要介護度をよくする、高齢者の自立と健康を目標にしています。同じことが言えるのは実は医療ではないかと思います。どうやって健康になるか、予防であり、重症化予防、いろんな形で改革していかなければなりません。
実は病院などの医療、事務的なIT化は80年代・90年代に進んだが、医療の分析という意味では日本はあまり進んでいません。電子カルテは10数種類あってお互いに互換性がない。例えば支払基金と国保連合会がありますが、この2つはデータが全然違うので、お互いにデータを一緒に出来ないのが現状です。そういうインフラも全部直そうと我々は今やろうとしている。そのためには保険者も変わってもらわなければならないということだろうと思います。

武見:
まさに核心に入って参りました。健康長寿社会をつくろうという時に最大の支えは、国民皆保険制度であることは間違いない。その中で改めて予防給付も含めた新しい課題が沢山出てくるのは必至です。分散してしいる保険者を束ねなければならない。このために先ずは国民健康保険を都道府県ごとに統合するところまでは実現しました。今後どこまで我が国の医療保険制度というものは整理統合していくべきなのか、これは重大な課題で、意見も大きく分れるが、この点について大臣は如何お考えですか。

塩崎:
先輩方が世界でも稀に機能するインフラを作ってくれました。ただ、今のような形で再編をしてきて、かなり良い格好になってきています。単なる形ではなく、働いている人たちとその家族の皆さんが健康で、負担が過剰にならないように上手に工夫して、負担をし合いながら、たまたま病気になってしまった人には保険で高額なお金を支払わなくて済むという仕組みを作ってくれた。問題は本当に健康を守るための努力を保険者はやっているのかというと、例えば国民健康保険は、今まで市町村長がトップで、道路だ、学校だ、いろんなことで忙しいために誰かに任せる。任せても権力は首長さんが持っている。従って保険者は単にレセプトの料金を支払うだけになる。これではいけませんということで今やろうとしているのが、まさにキチッとした健診データ等の分析に基づいて、プログラムを作って指導する。その指導を実行する力がなければならないと思います。従って保険者機能をもっと発揮してもらうためにインセンティブを既に国民健康保険の改正時に入れ込んであります。
そういう形で国民健康保険は上手くいくようになっているが、問題は企業の健康保険組合です。ドイツと日本の保険者数の規模を比較すると、日本は相変わらず1400位健康保険組合がある。かつてドイツは1200位あったが今は統合されて124しかない。ただドイツは産業別に健康保険組合があり、日本は企業ごとにあるので一緒にするのは簡単ではない。夫々の健康保険組合に何人の人がいるのかを見ると、圧倒的に1万人以下が7割位を占めている。実はデータとして分析に耐えうるのは50万人ともいわれている。結局、データとして統合をすることは出来るのではないかみたいな議論が今行われていますが、いずれにしてもビッグデータをキチッと分析した上でどういう指導をして頂くかをよく考えていくような形でやっていかなければならない。何よりも厚生労働省が右向けといったら国民が右向くようなことは絶対にない。どうやって国民一人一人の行動を変えていくかというためには、あらゆる関係者の皆さん方が協力して、厚労省ももっと謙虚になって、県も市町村もそして保険者の皆さん方に一番頑張ってもらわなければならないので、そこをどうやってみんなが自分たちの問題として察してくれて頑張ってくれるようになるか。そのためのインセンティブや若干のペナルティもあるかもしれない。そういう仕掛けを作りながら自らの問題として考えて頂くように。
また、日本は健診率が低すぎる、現役で働いている人に〝精密検査が要りますよ〟と言っても行かない人たちが沢山おられる。保険者が〝ちゃんと行ってください〟と言わなければいけない筈なのにやっていない保険者がいっぱいいる。結局みんなのコストとして医療費で回ってきて、みんなで重荷を背負わなければならない。誰だってそんな重荷は背負いたくない訳で消費税は軽いほうが本当は良い。しかし社会保障をキチッと廻していくためには一定程度の財源は確保しなければいけないということで、来年の2%をどうするか。私としては社会保障を守っていくためには、やはり財源がなきゃ困るというところでございます。

武見:
あっという間に時間が過ぎて、グローバルヘルスについてもご所見を頂きたかったところですが。安倍内閣のもとで厚生労働大臣として我が国の人口政策を本格的に稼働させようとしていることがよく分りました。しかしそれは政府が旗を振るだけでは実行できる訳ではなく個々の国民一人一人の生活パターンまでをも大きく変えていく、働き方さえも大きく変えていくことによって、活力のある健康長寿社会づくりをしようとする大きな目標が今の大臣のお話の中からみえてきたように思います。こうした大きな変換期においてこれから様々に試行錯誤が行われて最終的にかつての健康で教育レベルの高い中産階級社会と同様に共通の目標を我が国が掲げることが出来るようになり、それによって21世紀の日本の成熟国家としての発展の方向性が明確になってくるように思われます。大臣今日はお疲れのところを参加頂き、有難うございました。

塩崎:有難うございました。 

盛大な拍手の中、塩崎厚生労働大臣が退場され、終了となった。

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