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(公社)都柔整「第5回 柔整未来塾」開催される

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平成27年2月28日(土)、東京都柔道整復師会館(東京都文京区)において『第5回 柔整未来塾』が開催され、柔整業界の未来を担う公益社団法人東京都柔道整復師会に所属する若手の会員が都内各所より約50名ほど集まった。

柔整未来塾開催される

当日は元厚生労働大臣である尾辻秀久参議院議員を迎え、「今後の社会保障制度について」と題し、柔道整復も含めた日本の医療の現状や社会保障についての講演が行われた。

工藤鉄男会長
工藤鉄男会長

伊藤述史副会長より開会の辞が述べられ、工藤鉄男会長のご挨拶では、〝先達が人の役にたつ人材を育てるために行動を起こし、立派な技術と業界を残してきたことは歴史が立証している。その想いを継ぎ、私どもが新しい時代の人づくりを目指して「柔整未来塾」をスタートさせて今回で5回目となる。今回ご講演いただく尾辻秀久先生は、日本柔道整復師連盟の最高相談役であり、厚生労働大臣を務め、現在の社会保障を組み立てた方である。この未来塾は、少人数での開催ということで、皆さんには地区から選ばれてきていることを理解していただき、各地域へ戻った際には、周りの会員にも今日の話を是非とも伝えていただきたい〟と開催趣旨とそこへ込めた熱い思いが示された。

『今後の社会保障制度について』
元厚生労働大臣 参議院議員 尾辻秀久氏

尾辻秀久氏

尾辻氏は〝柔道整復の制度環境を整え、柔道整復師が社会保障費削減や国民のために役立つということを、国民・地域住民にご理解いただけるよう一緒に力を尽くさせていただき、今日私が申し上げることが少しでも今後の皆様のお役に立てばうれしい〟と話され、講演をスタートした。

先ず日本の医療の現状として、尾辻氏は〝日本の医療の一翼を担っている皆さんには、我が国の保険医療制度は、WHOの世界保健報告において、医療の質や平等性という観点から総合的に評価して、世界第一位と評価されているという事実をしっかりと認識していてほしいと思う。そして、日本の医療は全国統一価格となっており社会主義的な仕組みになっている。これは世界的にも特殊な状況で、標準といえるアメリカでは4000~4500万人もの国民が保険に入っておらず、お金がなければ治療してもらえないのが普通の状態となっており、日本は非常に恵まれている〟と日本の医療の質の高さを強調した。しかしながら、安倍総理が「ダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)」の冒頭演説において示した「既得権益の岩盤を打ち破るドリルの刃に私はなる。いかなる既得権益といえども、私のドリルから無傷ではいられない」といったフレーズを引用し、安倍総理の決意が、郵政改革・農政改革に続いて社会保障改革へと進み、アメリカで無保険者が溢れている状況は決して対岸の火事ではなく〝明日は我が身だ〟と、日本の誇る国民皆保険が危うい状況に陥る可能性があることを示唆された。

その背景には日本の厳しい財政状況があり、〝借金は増え続け、1千兆円を超えている。利息だけで毎分1,924万円が発生している〟と極めて厳しい状態を示し、〝その中で、一般歳出の約54%は社会保障費が占め、社会保障費はどんどん伸びて、2014年は現時点で115.2兆円となっている。しかし、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には150兆円にまで膨れ上がると予測されており、どう対応するかが大きな課題となっている〟と、改革の火の粉が降り注ぐ理由を明らかにし、そこへの対応が必要であると提起した。

尾辻氏は、さらに続けて〝いまや日本の平均寿命は男性80歳・女性86歳で、現在70歳の人の平均余命は男性15年・女性20年とされている。日本は理想であった「長寿国家」を実現させた〟としながらも、その一方で〝年金制度は平均寿命が60歳以下であった時にできた制度であり、当初の制度設計自体に矛盾が生じている。財政は税収だけではとても賄えず借金に頼らざるを得ない状態だ〟と長寿国に成長したが故に制度疲労を起こしていることを主張した。その上で〝日本の消費税は世界的にも低い。ヨーロッパ諸国の消費税率は15%以上だ。今の社会保障を維持しようとするならば、ヨーロッパ並みの最低15%にしないと維持できない〟と理解を求めた。

加えて〝医療経済は、供給が増えると需要が減るという一般的な経済の法則とは異なり、供給すればするだけ需要は伸び続けて、必ず供給に追いついてしまうといわれている。病床を増やせば患者も増える。だから病床を減らそうとしている〟と必要以上に需要を生むことの危険性をほのめかし、柔道整復師過剰といわれる問題についても、対応策を講じなければならないとし、ともに協力体制を築いていくことを約束して講演を終了した。

工藤会長は〝今日の講演を聞いて、皆さんにも社会保障の肝の部分がどのように作られてきたのかが理解できたと思う。公益社団法人東京都柔道整復師会は、今後も立ち止まることなく、若い世代が胸を張って堂々と生きていける新たな時代を創りあげるために積極的に行動をしていく。そのために団結していこう〟と力強く締めくくった。

その後、受講者に修了証明書を授与され、橋本昇副会長の閉会の辞により閉会となった。

国の財政について、意識することは普段あまりないのではないかと思われるが、厳しい状況は他人事ではない。医療従事者として、社会保障や日常の施術のあり方について見直す良い機会となったのではないだろうか。患者である国民のためにも、高い意識を持ち施術に当たる必要性を強く感じさせてくれる勉強会であった。

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