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『第3回 上手・適正な保険請求の為のセミナー』開催

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平成26年6月8日(日)に柔道整復師センター(東京都中野区)において、「患者と柔整師の会」主催『第3回 上手・適正な保険請求の為のセミナー』が開催され、所属団体を問わず東京・千葉・埼玉・神奈川などから大勢の柔道整復師が出席した。

最初に司会進行役の森崇史氏より〝本セミナーは保険者からの支払いが厳しい状況になっている中で柔道整復師が適正な請求、活動ができるようにと企画されたもので、団体に所属している方だけではなく、個人請求者も含め150名を超える申し込みがあった。討論会では皆様から忌憚のない意見を賜り、保険者とどのように交渉していくのか検討したい〟と開催にあたっての趣旨や当日の流れ、注意事項などの説明が行なわれた。

「患者と柔整師の会」患者代表の今城康夫氏は〝高齢化に伴い医療費が増大し、療養費受領委任払い制度を継続するために今まで以上に適正な請求が求められている。社会的に信頼される診療・保険請求について研修され、今後に生かしていただきたい〟と挨拶を行なった。また〝当会は有効である柔道整復治療を患者が受けやすくなるよう、柔道整復診療制度の改革に取り組んでいる。昨年からは慢性疾患に対する業界統一の施術ガイドラインを作成し、施術内容の明確化を図っている。柔道整復療養費は患者にとって必要な制度。ぜひ自信をもって施術を行なっていただきたい〟と、「患者と柔整師の会」の活動を報告するとともに参加した柔道整復師を激励した。

「レセプトの返却防止対策」
社団JB日本接骨師会 専務常任理事・保険部長 諸星眞一氏

諸星氏は〝柔道整復療養費の疑義請求・不正請求がマスコミや国会で取り沙汰されたことは記憶にも新しい。このようなことを無くし、柔道整復師一人ひとりが説明責任を果たし信頼を確立しなければならない。そのためにも施術録・支給申請書を正しく理解して記載することが重要。柔道整復師養成学校は全国で14校であったものが現在では100校以上となった。国家試験対策を重視する養成学校が増え、療養費受領委任払制度・療養費の支給基準については学習しないことも柔道整復師の質の低下を招く一因となっていると考えられる。平成23年12月には社会保障審議会にて、会計検査院から医療費の伸びを上回る療養費の増加を指摘され、療養費の見直しが必要とされた。特に「頻度が高い施術」「3部位以上の施術」「長期にわたる施術」は厚生労働省もシビアに捉えている。患者への聞き取り調査結果でも、患者の言う負傷部位と請求部位が異なる・負傷原因が柔道整復の適用範囲外であるなどの回答が多く得られ、会計検査院は多部位請求の適正化や領収書・明細書の発行、療養費支給申請書施術日記載を義務付けた〟と柔道整復療養費の審査・支払状況が厳しくなってきている背景を解説した。

レセプト返戻防止のポイントとして諸星氏は▽予診票、▽レセプト、▽施術録、▽負傷原因、▽来院簿の作成、▽負傷名告知書(確認書)、▽領収書、▽保険者・患者との価値の標準化およびコミュニケーション―の8項目を挙げた。

〝予診表には必ず患者に記入してもらい、施術者は筆を入れないこと。負傷原因は「痛みが走った」等抽象的なものではなく、保険者等が読んでも理解でき怪我をした様子がわかるように「いつ・どこで・なにを・どうして・どこを・どのように痛めたのか」を具体的に記載する。経過所見として負傷の程度の変化についても記載しておくことが重要となる。返戻された際、社団JB日本接骨師会では返戻されたレセプト・患者本人自筆の予診表のコピー・施術録のコピー・患者の陳述書等を添付して健康保険組合に提示している。来院簿や負傷名告知書等を作成しておくと、請求した来院日数や負傷名が患者照会結果と異なっていた際に確認できるため記録しておくべき。領収書は、患者が来院日や一部負担金額を把握できるだけでなく、金銭の授受が正しく行なわれたことの証明にもなるため、保険分と保険外分に分けて発行すること。患者の自署は申請書が白紙の状態の時に行なってもらっている現状だが、その理由を患者に説明し、そのうえで施術所内に内容閲覧に関する掲示を行なうなどして周知徹底を図る〟など、返戻されないレセプトの作成方法について具体例も交えて解りやすく解説した。

それでも返戻された請求に関して、諸星氏は〝縦覧点検等、今後ますます審査が厳しくなると思われるが、再請求を諦めてしまうと慢性疾患等を請求しているから再請求してこないのだと保険者に思われてしまう。保険者に誤った認識を与えないためにも、患者の情報を詳細に伝えることを心がけながら堂々と再提出してほしい〟とし、保険者にもよく状況がわかるようなレセプトを作成することの意義を主張した。

「療養費の問題点とあり方」
元 日鐵住金溶接工業健康保険組合常務理事 伊藤義徳氏

伊藤氏の所属していた日鐵住金溶接工業健康保険組合は、昭和47年に日鐵溶接工業健康保険組合として設立し、設立以来27年間黒字経営を維持してきた。老人保健拠出金の負担増で赤字に転じた時期もあったが、平成15年~21年までは保険料率を変えることなく黒字経営をキープ。平成25年に新日鐵住金健康保険組合と合併し、「日鐵住金溶接工業健康保険」となった。

伊藤氏は〝平成12年に実務の最高責任者である常務理事として、いろはのいの字もわからないままこの世界に入った。当時、健康保険組合は厚生労働省の枠組みの中にしっかりと組み込まれており、何をするにも国が主導だった。予算は許認可制だったが、組合員から徴収する保険料が唯一の収入源であり支払いは殆ど現金だったため、資金繰りに奔走した。そこで予算を見直し、支出の大部分を占めていた医療費を下げようと考えた〟と医療費の管理および調査に乗り出した当時の状況を話した。

調査によって、医療費が高額となっている被保険者は限られていることが分かった。特に診療実日数の多い人やレセプト枚数の多い人は、母親が若く子どものケアの仕方が分からずにすぐに病院にかからせるという世帯が多かった。健康に対する知識がないのではと考え、対策として伊藤氏は保健師に家庭訪問させて健康相談や保健指導を実施したり、子どもが生まれれば1年間毎月育児雑誌を送ったりしたという。その結果、悩みが解消されて医療費を下げることに成功した。

この経験から、伊藤氏は〝被保険者本人が良くなれば家族も良くなる。すると職場も良くなり、健康保険組合は無駄なお金をかけずに済む。被保険者は3割しか負担していないので安く感じるかもしれないが、7割は被保険者全体から集めたお金で賄っているということを忘れてはならない。知らないで済ませようとしていることが多い〟と被保険者の知識・認識不足が医療費増大の一因となっていることを指摘した。

柔道整復療養費においては〝法定給付費に占める療養費の割合は1%にも満たない微々たるものであり、削減対象としての優先順位は低いと考えている。柔道整復師にかかわるデータは平成15年からすべて取っている。おかしいところがあれば返戻できるよう準備しているが、しっかりしたレセプトを出してくれれば何の問題もないと思っている。正々堂々と誠意をもって施術を行なえば、柔道整復師の皆さんの行なっていることは認められる〟と、諸星氏と同様に正しい施術を正しく請求するよう呼びかけた。

「療養費の審査基準の運用について 討論会」
弁護士・本多清二氏

はじめに本多氏は〝保険者の柔道整復師に対する全体的な評価は、「料金が安い」「薬を使わない徒手整復を行なっている」「敷居も低く治療が受けやすい」と前向きである。しかし良くない行動をしている一部の柔道整復師が目立つために、保険者に誤解されてしまっている。その誤解を解きたい。一番の課題であろう急性期を超えた外傷、いわゆるグレーゾーンの施術を療養費支給対象とするために、基準・定義について話し合っていきたい〟と話した。

社団JB日本接骨師会は予てより柔道整復療養費改革に取り組んでいる。本多氏は〝昭和11年に作られた基準では「新鮮なる外傷」と表現されている。整形外科が非常に少なかった当時は、柔道整復による治療が社会的にも受け入れられた。しかし時代が移り変わり、当時の基準は合わなくなってしまった。急性期を超えてしまった外傷は誰が診るのか。これこそ柔道整復師の範囲ではないのか。慰安行為と治療行為をどう分けるかという基準を作れば、保険者も安心して療養費を支給してくれるのではないかと考えている〟と改革活動を始めるに至った経緯を説明し、討論へと移った。

〝慰安行為と慢性疾病の治療(痛みを取る緩和医療・治療)をどう区別しているか〟という本多氏の質問に対し、参加した柔道整復師からは▽原因があるかないか。本人に原因が思い当たらないものは慰安。基本的には原因がある。▽治療には計画性がある。身体の機能を評価し、改善の計画を立てる。原因についてはある程度仮説を立て、患者に聞く―などの回答があった。

本多氏は〝原因がわからないものがあるのに、理由がないと保険者に認めてもらえないから嘘を書いてしまう。原因を探求しているということをレセプトにどれだけ反映できるかが重要となる。先生方は痛みを緩和し、少しでも増幅しないようにと治療している。社会的に急性期を超えた外傷の治療を求める患者は増えてきており需要は高い。それを柔道整復の従来の枠組みにどう当てはめていくか〟と今後の課題を明示した。さらに柔道整復師が急性期を経過した外傷に対し治療を行っているということについて〝厚生労働省も暗に認めている。新鮮外傷のみであれば部位制限などしない。乱暴な請求をするから、中身を見ずに請求額を下げるために部位制限をかけている〟として、急性期経過外傷が支給対象として認められないのは、柔道整復師の請求方法にも問題があるからだと指摘。

医師との併療については〝患者が徒手整復を希望することもある。医師が投薬をするだけで治療と言えるのか〟という意見も上がり、〝薬を処方されているあいだは医師の管理下となり、療養費は支給されない。療養費は医療が受けられない場合に補完的に支給されるものだとされているが、それがおかしい。どの医療機関で治療を受けるか選択するのは患者ではないのか。こういった議論をしていかなければならない〟とさらに議論を重ねる必要があるとした。

また、度々議題に上がる白紙委任の問題に関しては〝患者さんが自分の請求内容を意識して署名したのかということが問題になるが、患者が途中で来院を中止したりして署名がもらえなくなるということの無いように、先生方は先に署名してもらっている。患者が治療内容を把握できないということが問題であるなら、領収書に明細書をつけて渡すようにすればいい〟と、施術者として白紙で署名してもらわざるを得ない事情を説明した上で、明細書を発行し患者にも自分が受けた施術を理解できるように工夫するなどの解決策を提案。〝改革を実行するには、保険者と膝を合わせて信頼関係を作る必要がある〟とした。

そのような仕組みを纏めるための策として、本多氏は団体に所属していない個人請求者が増えている現状に言及し、〝意に反して団体に入る必要はないが、療養費という公的資金を扱うのだから、支払機構を作り登録してもらう〟と、ある程度の規制を設ける考えを示した。

試験的に改革案を運用しているJB接骨院では、患者の反応として〝計画性を持って治療を行なう為に検査やテストが増え、待ち時間が長くなった〟〝同じ痛みで来ているのに慢性と急性に分けられるのか〟などの不満の声も上がってきているという。保険者だけではなく、患者の理解を得ることも重要な課題のようだ。

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