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『柔道整復施術ガイドライン作成にあたって(全体会議)』開催

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平成26年1月19日(日)、柔道整復師センター3F(東京都中野区)において『柔道整復施術ガイドライン作成にあたって(全体会議)』が開催された。

今城康夫氏

まず主催団体である〝患者と柔整師の会″代表・今城康夫氏は「私達〝患者と柔整師の会″は平成22年より国民生活に密着した柔整療養費受領委任払制度を守るため改革に取り組んできた。傷病名は昭和11年の通達で定められたもので、現在の柔整師の治療技術や患者の実態に全く合っていない。そこで急性期経過外傷に対する共通認識を持つ為に、柔道整復施術のガイドラインを作成することとした。私達患者にとって痛みや苦労を救ってくれる柔整診療は必要な制度。保険者の審査が明確化され、柔整師の治療も適正化されることで、患者も治療を受けやすくなる」と現行制度の曖昧な部分をガイドラインにより明確にすることは患者の利便性にもつながると挨拶した。

荒井俊雅氏

本会議で座長を務めた社団JB日本接骨師会常任理事・荒井俊雅氏は「柔道整復師業界は療養費受領委任払制度、算定基準、グレーゾーン等様々な課題・問題を抱えているが、患者・保険者・柔道整復師の三者から意見を聞き時代の流れに合う施術のルールや枠組み作りをしなければ、社会に対し信頼される発言もできないし問題解決にも至らないだろうと考えた。骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷においては統一した教育を受けているため、個々の柔道整復師の認識にそれ程の差はないが、軟部組織損傷などにおいては統一した基準がなく、症状の捉え方や見方、治療方針等に幅がある。そこでグレーゾーンを含む急性期を超えた外傷について、治療のガイドライン作成のためご意見を伺いたい」と今回の会議の主旨を説明した。

本論は【急性・亜急性の認識について】【症状固定について】の2つに大別され、フリートーク形式で進められた。

急性・亜急性の認識について

荒井氏は「ガイドライン作成のためには共通認識、共通の言葉の理解や定義を持たなければならない」とし、急性・亜急性の概念をどのように捉えているか参加者に問いかけた。

柔道整復教育に携わっているという参加者は「急性期、亜急性期、慢性期といった受傷の期間によっての分類という解釈ではなく、急性外傷は急激な外力により起こり、亜急性外傷は反復や持続した外力によって軟部組織などに急性外傷と同様の損傷が起こったものと解釈している。亜急性の概念は平成9年位から徐々に学校協会のテキストにも掲載され、それを基に国家試験も作成されている」や「亜急性の外傷は反復して外力が加わったものと認識しているし、学生の方にもそのように伝えている」など、医科のように期間を表すものではなく、損傷時にどのように外力が加わって起こったものかを表す「分類」であるとの認識を示した。

その一方で「時間の経過でしか考えられないのではないか。1~2週間以内が急性、それ以降は亜急性、1ヶ月以上経てば慢性的な疾患と考えている」や「『亜急性は急激ではなく反復する力によって痛めた外傷』という概念は保険を適用したいがためのものではないかと疑われかねない。医学的な『期』、急性期、亜急性期、慢性期という概念の中で説明した方が誤解を受けなくて済むのではないか」と医科同様に期間的な指標として捉えるべきとの意見も上がり、柔道整復業界内でも認識に差があることがわかった。

また保険適用に関しては「急性・亜急性を期間としてとらえた場合、例えばなかなか治らず1ヶ月経って転院してきた患者が、慢性で保険の適用外だと言われるようなケースが頻発する可能性がある。負傷原因は本来患者に聞いて書くものだが、患者自身が認識していないというケースも数多くあると思われる。負傷原因で保険の適否を判断するより、患者の症状を良く聞き柔道整復師の技術で治せる範疇なのかどうかで考えるべき」と「負傷原因が判明できない」という状況も起こり得ると認識し、その場合には症状を保険支給の対象となるか否かの判断材料とするなどの配慮が必要とする意見も上げられた。

症状固定について

関連して【症状固定】と呼ばれるものの治療について「これ以上治療を続けても治癒は望めないという判断。それでも患者が少しでも治療してもらえれば楽になるということであれば、保険者にもご理解いただかなければと思う」との意見や「治療を行うと症状の軽快が得られるが翌日には再び治療前の状態となる場合も、悪化予防の治療措置であるならば症状固定も治療してもよいのではないか」「まだ痛みがあるのに『症状固定』だと突き放されると患者も納得がいかない。しかし症状固定後の治療を柔道整復師はどのような形で捉えどこまで治療するのかを線引きしなければならない」など、症状固定後も治療により症状の一時的な軽減や悪化防止が認められる場合には、ある程度の基準を設けた上で治療すべきとの意見が多数を占めていた。

その中で「患者を一括りには出来ない。ガイドラインは回数ではなく誰もが納得するような数値等を基に作ってほしい」「1回の問診で鑑別は出来ないが、2回3回と治療を行なえば判断ができると思う。鑑別までの期間は認めてほしい」「術者は治療方針を立てて治療し、適宜評価しているはず。そして効果があれば続け、効果がないあるいは悪化している場合には治療の方向性を変えている。そのためガイドラインでは治療の方向性の正否を判断する時期をある程度示しておく必要がある」など、ガイドラインにおいては単なる施術の回数で制限するのではなく、治癒度合いを考慮しながら目安となる時期までに方向性の判断を下すよう示すべきとの要望も上げられた。

本多清二氏

最後に社団JB日本接骨師会・最高顧問本多清二氏は、「一人ひとりが行なっている施術やそれに対する認識がバラバラでは社会の支持は得られない。行なっていることをきちんと提示して、その良し悪しを議論しルール化していくことが業界発展のための基礎であると確信している。今後、フリートーキングを2回3回と重ね、汎用性の高いガイドラインをつくっていきたい」と語り、会議を締めくくった。

10以上の柔道整復師団体、保険者、業界関係者、マスコミ等から約60名が一堂に会し、柔道整復施術に対する共通の認識を持つためのガイドラインについて協議した本会議は、業界の適正化のためにも非常に意味のあるものであったと思う。しかし今の段階では業界内であっても言葉の定義や認識など様々な点において相違が見受けられ、統一した見解を持っているとは言い難い。議論を重ねて、全ての柔道整復師が共通認識を持って同じ方向に進むための道筋となってほしい。

尚、〝患者と柔整師の会″では本会議を今後次の予定で実施することを発表。各業界団体に案内状が送付された。

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