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日整・工藤会長と全整連・田中会長が柔整師の未来を語る

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平成25年11月17日(日)東京国際フォーラムにて『第11回医療オリンピックC-1』が開催された。その中で『緊急提言 柔道整復師の未来』と題し、整骨院振興協同組合・近藤昌之代表理事の司会の下、(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長一般社団法人全国柔道整復師連合会・田中威勢夫会長によるトークライブが行なわれた。いったい業界のリーダー2人は何を語ったのか?!

柔整ホットニュースではこのトークライブでのやり取りを余すことなく会員の皆様に公開する。

トークライブ『緊急提言 柔道整復師の未来』

緊急提言 柔道整復師の未来

近藤:
業界を代表する二人に柔道整復師の未来という題材で話を伺う。まずは公益社団法人になり日本柔道整復師会として初めての選挙で会長になった工藤会長に挨拶をお願いしたい。

工藤:
今、この業界が大変な状況になっているということは、ここにお集まりの柔道整復師の皆さんが日々の仕事の中で感じていることだと思う。各々が努力し、患者さんに対する信頼関係をもう一度構築する努力をしなければならない。各団体のトップはこの業界をどのように導いていくか、道先案内人としてその方向性をしっかりと5万人の柔道整復師に証明していく。しかし信頼や新しい絆はここにいる若い先生達が築いていくものだと思っている。我々が皆さんの未来を預かった以上は驕ることなく、必然的にこのようなところに参り将来のことを話さなければいけないという想いで本日は参加させていただいた。

近代柔道が発生した時代には、数多くの武術家が流派・道場を持ち様々な所で活躍していたが、そこに西洋文化が入ってきたことで日本古来の武術の存続が危うくなっていた。そこで加納治五郎先生が、各々の武術の良い部分を結集して近代柔道を作った。武道の精神を汲んだ武道医療と言っても過言ではない我々の柔道整復術も、西洋医学一本で日本の健康を作るという国の方針から外れ、一度は明治時代に消滅した。しかし再度大正9年に復活した。西洋医学が発展しつつも、接骨院での治療技術とその技術を多くの国民が求めているという事実を目の当たりにした国が、止むを得ないとして復活させたのが柔道整復師だ。加納治五郎先生と同様、我々の仲間をひとつにまとめることが日本柔道整復師会の会長として与えられた使命とし、必ずやこの柔道整復師5万名をまとめていく。そして100団体あるとも言われているこの分かれた組織を、皆さんの未来のためにひとつにまとめることに汗をかいてまいりたいと思う。

近藤:
続いてはもうひとりのゲストである一般社団法人全国柔道整復師連合会・田中威勢夫会長にご挨拶をお願いしたい。

田中:
これはこの業界に限ったことではないが、離合集散を繰り返す。とりわけこの柔道整復師業界は昔から分散する一方だった。業界が分散する時というのは何も結果が残らない。厚生労働省や保険者を訪問した時に「A団体はこう言っているがB団体はこう言っている。話をまとめて持ってきて欲しい」と言われる。これがこの業界が全く進展しない原因のひとつだと思う。そこで業界を一本化し、同じ方向で一緒にやっていこうと今頑張っている。一本化することにより必ずや業界は変わる。皆さん、直ぐにとは言わないが期待していただきたい。

近藤:
最近の柔道整復師業界の状態をみると会計検査院、行政刷新会議という2つの大きな流れがあり、柔道整復師施術の適正化の取組として一昨年の3月12日に通達があった。それ以来、各保険者の患者調査に伴い受診抑制を招いてしまうような問題が多々発生している。この点について工藤会長のお考えをお聞きしたい。

工藤:
今、国民や保険者などから我々が信頼を失くしている原因のひとつに、技術や知識の研鑚もないまま卒業と同時に開業し、保険の取り扱いができるということがある。その中で開業している人達が自分の技術をしっかりと継承していこうというこのような大会は、非常に意義があるのではないかと思っている。

柔道整復師が昭和11年から使わせていただいている療養費にはルールがある。保険は柔道整復師のためにあるのではなく、あくまでも国民の利便性、保険者の利便性を考慮したもの。やむを得ないということで保険を使わせて頂いているのに「我々が使うのは当たり前だ」という感覚の柔道整復師が非常に多くなってきた。保険者としてはお金がかかり赤字になっても、しっかりやらなければ会費をいただいている被保険者に対して申し訳ない。そうなれば当然、きちんとルールに則っているかを調査する。自分自身を支払者側として考えてみれば当たり前のことだと思う。

ただし現在、あまりにも行き過ぎた患者調査などをしている保険者もある。そのような保険者に対しては、連合の田中会長と様々な所に徹底して申し立てをしている。まだまだこの件については保険者や厚生労働省と話し合っていく必要がある。今、皆さんが苦労している患者調査の名の下に行なわれる受診抑制を抑え、そして接骨院、整骨院にかかりたい患者さんが自由に自分の意思で足を運べるような状況を提供したい。皆さんも保険というものがどういうもので、なぜ使わせてもらっているのかということをもう一度しっかりと確認していただきたい。

近藤:
保険の勉強をしない柔道整復師が多いことは大きな問題であると思う。よく若い柔道整復師の方から、受領委任払いはいつまでも使えるものなのかという質問がある。この問題を含めて田中会長のご意見を伺いたい。

田中:
今、健康保険組合などが受領委任払いを廃止する要望を厚生労働省に上げていることも事実である。しかし工藤会長が言われたように、この受領委任払いというのは誰のものでもなく国民のための制度である。保険者だけでは制度は変えられないが、そこに厚生労働省、マスコミなどが一緒になるとこれは危険な状況になってしまう。これだけマスコミなどからバッシングを受けているが、幸いにして柔道整復師にかかる患者さんは一向に減らない。これは国民にとってこの柔道整復師制度は良い制度だということだ。保険制度を悪用してしまうと様々な問題が出てくる。先生方ひとりひとりが保険制度をもう少し勉強する事によって受領委任払いが廃止されるという心配がなくなると思う。

近藤:
もうひとつ大きな問題として、この業界を大きく混乱させた要因に柔道整復師の増加という問題がある。10年前から比べると柔道整復師の数が約2倍になっており、学校が増えることによって柔道整復師も増え接骨院・整骨院も増える。この点について考えをお聞きしたい。

工藤:
私は柔道整復師というのはまだまだ足りないという論者のひとりである。10万人だろうが20万人だろうが、私どもが国民に必要とされる職業であれば間違いなく問題はない。介護保険は、近いうちに在宅医療に重点が置かれるようになる。病院完結型から地域完結型に対応しようという動きが出ているところでは、柔道整復師のマンパワーはまだまだ必要とされる。ただしどんなものであっても法律を守らなければ意味がない。ルールを守り、そして適正化に沿ってしっかりと保険請求することにより、まだまだこの業界は良くなる。これからこの柔道整復師業界がスポーツ分野、介護分野、災害の分野、そして地域の在宅医療など色々な分野に配置転換していくと考えたら、まだまだ柔道整復師の数は足りないと思う。私はそのような社会保障の中で、柔道整復師が働ける状況を作っていくことが我々の責任だと思っている。

近藤:
業界の未来はいっぱいに広がっているということが理解できた。しかしその一方で、業務範囲の問題がある。義務の問題、業権をどう拡大するのか。この制度改革について田中会長の意見を伺いたい。

田中:
受領委任払い制度は、整形外科も接骨院・整骨院も少なかった昭和11年から始まった。協定というものはその当時の柔道整復師団体との間で交わされたところから始まっている。柔道整復師法の中で業務の制限というのは、15条、16条、17条の「外科手術をしてはいけない」「薬品の投与をしてはいけない」「骨折・脱臼の後療をする時にはお医者さんの同意を得なさい」の3つしかない。ただ健康保険を取り扱う上で、協定が基となり、骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷という形になっている。実際にはこれ以外の変形性のものや腱鞘炎も治療しているが、それを正しい傷病名で請求させてほしいと厚生労働省に言うと今検討中だと返答がある。20年位前からずっと検討している状態である。やはりそれは業界がバラバラであったという部分に反省点があったと思う。しかし2年前に全国柔道整復師連合会が出来た。制度改革のひとつとして、公益社団法人を中心に連合会も一緒になって活動することにより、適正な傷病名で請求ができるようにしていきたい。やはり制度はその時代に合ったように変えていくのが当たり前だと思う。しかしそれをしてこなかったことを業界人として反省していかなければならない。

近藤:
制度改革をするには足元を固めないといけない。当然のことながら我々は国家資格であるが、この社会権益というものが最近揺らいでいると思う。その点について公益社団の会長としてどのように考えているのか。

工藤:
社会保障のルールが変わってきた中で、果たして柔道整復師に与えられたものがこれだけでいいのかということは大きなテーマになるのではないかと思っている。そこで日本柔道整復師会は公益社団というハードルの高い新しい法律の下に移行したことで、当然、協定の見直しをしようと着手している。ただこれは我々素人集団が着手したところで、結果がどうであるというのはなかなか判断できない。そこで日本柔道整復師会では、この11月に新しくあるプロジェクトを立ち上げることになっている。全ての柔道整復師の問題、法律の問題やルールの問題、制度の問題などを入れ込んだコンプライアンスプロジェクトチームを作り、このチームに様々な分野の有識者を入れて色々な方向性を出していく。そしてそこでの結論を厚生労働省の方や保険者の代表の人達もある程度理解できるようにして出していくということになった。今までの我々の交渉は、ただ政治家の先生達にお願いをしていたが、結果は田中会長が言った通り昭和11年からほとんど変わっていない。それならばやり方を変えようではないかということで、交渉のエビデンスをしっかり作っていこうということになった。難しいのは我々の治療にあたっては物的証拠の求められる検査機構がなく、発生状況からその証拠を集めていくということ。物的証拠を求めていくと医接連携の強化が必要になる。またそこには連携のあり方という大きな問題が発生してくる。そのようなことを考えた時に、我々ができる範囲内のものをどのようにしてエビデンスに変えていくのかというところを、日本柔道整復師会としてしっかりと考えていかなければいけない。今、そのための組織作りに着手しているところだ。

近藤:
この業界は我々ひとりひとりが作っており、またこれからの未来も我々ひとりひとりが作っていく。しかし業界のエビデンス、核になるところには知識者の力が必要である。人づくりが新しい未来への施策になるという力強い言葉をいただいた。ただ我々の業務を日常に見ていくと、変形のおじいちゃんやおばあちゃんが捻挫する。変形だって捻挫はあるが、しかし整形に行くと変形性関節症となり、不正ではないかと言われ非常に不本意である。傷病の問題や国民のニーズに応じた療養費の業務範囲の問題について、田中会長に意見をお願いしたい。

田中:
療養費というのは医療の補完である。医療を助けるコルセットや松葉杖、サポーターと柔道整復師は同じ扱いになっている。しかし柔道整復師の業務とは骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷、まさしく医行為そのものではないか。だが厚生労働省は柔道整復師の行為を医行為として認めていない。だから医療を助ける療養費となる。医療ではないから診断権がないと言うが、柔道整復師も患者さんの様子を診ながら問診、視診、触診をして傷病名を決めている。傷病名を決めるということは治療の指針であり、総称してそれを診断ということになる。柔道整復師にはそういう権利はないと厚生労働省は言っているが、裁判の結果では柔道整復師の行為は医行為であると言われている。それでも厚生労働省は認めていない。この根本の部分を何とかしたい。お医者さんがやっているのは療養の給付で、柔道整復師は療養費。だが柔道整復師が実際にやっている行為が医行為であるならば、お医者さんと同列の療養の給付というずうずうしいことは言わないが、療養の給付でもなく療養費でもない、国民が柔道整復師にかかりやすいような柔道整復師に合った給付制度を新設して欲しいというのが私達の想いである。

近藤:
これから行政や保険者との将来的な関係はどのように構築していくべきだと考えているか?

工藤:
やはり保険者、行政、柔道整復師、そして患者さんのこの4者もいかにして信頼関係を築くかが重要である。この信頼が取り戻せれば、今、田中会長が仰ったことも当然柔道整復師には良い結果が出ると思っている。それには日本柔道整復師会、全国柔道整復師連合会だけでなく、すべての柔道整復師がまとまり、ひとつの新しい組織体を作り上げていき、そして行政、保険者、患者さんに我々のエビデンスをしっかり伝えていく。そうすることによってこの業界は間違いなく再浮上すると思っている。

近藤:
残り時間が少なくなってきたが、柔道整復師の未来について田中会長に話をお願いしたい。

田中:
業界がバラバラでは駄目である。みんなで同じ方向を向かなければならない。工藤会長から新しい協定を結び直す準備に入っているという話があったが、これを連合会としても一生懸命応援していきたいと思う。連合会に所属していない先生方には是非連合会に参加をしていただき、これから業界一本化を進めていきたいと思う。よろしくお願い致します。

近藤:
是非、日本柔道整復師会に入るなり、全国柔道整復師連合会に入るなりしていただきたい。どこにも所属していないと何の連絡もいかず何の情報伝達もできない。ひいては業界がまとまらず何もできない。こういう状態から何としても脱却をしようではないか。最後に工藤会長にも柔道整復師の未来について話をお伺いしたい。

工藤:
本日初めて私が日本柔道整復師会の代表としてここに来た。これも第一歩である。これが未来に繋がっていると私は思っている。そして私はそのきっかけが、皆さんもご承知の2020年のオリンピックだと思っている。我が業界の技術というのはWHOをはじめ世界に認められている技術であるが、この技術は今途上国に対して非常に必要とされている技術であり、モンゴル国、ミクロネシアの他、韓国やミャンマーなどにも技術を発信している。カンボジアにおいても皆さんの先輩が柔道整復術を広めるために、伝統医療の人達にこの技術を提供している。オリンピックをきっかけに柔道整復術を世界に発信しながら、どのように日本国で必要とされるようにするか。個人や団体に関係なく皆で一緒に、世界で認められたこの技術を広めるきっかけがオリンピックだと思っている。皆がこの技術を世界の人達に提供するようなスキームを必ず日本柔道整復師会が作り上げる。是非ともご協力いただきたい。

近藤:
みんなで2020年のオリンピック選手をケアしよう。是非業界を一本化したい。ただ業界の未来を作るのは私達ひとりひとりである。是非ひとりひとりしっかりと地に足を付けて新しい未来を築いていこう。

こうして約40分のトークライブは会場の熱気も冷めやらぬまま幕を閉じた。今まで不可能としか思えなかった柔道整復師業界の一本化だが、今回のトークライブを聞く限り、大いに実現が期待される。この流れにどこまで個人契約者、団体が賛同するのか?そして柔道整復師業界はどのように変革を遂げるのか?柔整ホットニュースでこれからの業界の動向を注視していきたいと思う。尚、C-1の模様は12月1日の柔整ホットニュースにて詳しく掲載する予定。

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