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登録柔道整復師制度及び柔整療養審査・支払機構の説明会を開催

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平成25年8月30日(金)、柔道整復師センター(東京都中野区)において『登録柔道整復師制度及び柔整療養審査・支払機構の説明会』が開催された。今回は本年6月に発表された『柔道整復師施術料療養費請求・受領委任払制度運用改善方策(案)』に加え、新たに▽類似負傷用施術内容情報提供書案、▽類似負傷施術録案、▽治療計画書案 ― の3つが提案され、議論が交わされた。

冒頭で『患者と柔整師の会』今城康夫代表から〝私たち『患者と柔整師の会』は国民生活に密着した現在の柔整療養費受領委任払い制度の改革をするため、全国各地で柔整師会議・保険者会議・患者会議を開催し、本年6月には、中野サンプラザに於いて現実的な方策案として改革試案のひとつである登録柔道整復師制度について発表致しました。本日は登録柔道整復師制度及び柔整療養審査・支払機構制度をよりご理解いただき実施したいと思い開催させていただきました。本制度は不正請求の削減や柔道整復師の資質の向上を図り、柔整療養費制度の信頼や保険者の審査合理化にもつながりますので、実施へのご協力よろしくお願い致します〟と説明会開催の趣旨が述べられ、続けて資料説明、事務局による保険者訪問報告が行なわれた。

本論に入り、司会進行役の本多清二弁護士は初めに療養費受領委任払い制度の歴史的背景について触れ、〝療養費受領委任払い制度は昭和11年に出来た。昭和36年には国民皆保険体制が敷かれ「誰でも」「どこでも」医療を受けられるという時代になったが、昭和11年に設定された基準はその後も細かな修正以外には殆ど変更されておらず、受領委任払いをどう運用していくかという議論が十分にされてこなかった〟とし、〝この試案を作成し始めた時に『療養費受領委任払い制度は果たして必要なのだろうか』という疑問を出発点とした。仮に受領委任払いがなくなったと想定してみるとわかる。施術を受けた患者は窓口で料金を支払い、償還払い請求をする。保険者はそれに個別に対応しなければならず、大変な手間がかかるようになる。受領委任払いのほうが事務的負担も軽く済むことを考えると、必要なものだと思われる。問題は、昭和11年当時の支払い基準のままでは療養費の支払い対象かどうかきちんと判断することが困難であること。どの保険者が扱っても同じような結果が出るように、もっとわかりやすい仕組みを作っていかなければならない。今日はそのための議論を展開していきたい〟と質疑応答へと移った。

―健康保険組合は支払機構に登録や契約をして、審査・支払いをしてもらうというのが前提なのか?

保険者が支払機構と契約をする必要はない。しかし少なくとも申し合わせ事項は作りたい。今まで柔道整復師団体に払っていたのと同様に支払機構に支払っていただければ良い。機構の役割は、保険者に納得して支払っていただくために今まで以上の審査情報を流す。また、捻挫・打撲・挫傷などについて、どの動作によりどこが痛んでいるのか、変形性の基礎疾患があるのか、あるいは繰り返し動作により疼痛が生じているのか等の判断ができない柔道整復師は請求の対象から外したいという狙いもある。

―我々保険者からすると方向性・趣旨は非常にありがたい。しかし一部団体だけ改善されても、他から訳のわからない請求が来てしまったら意味がない。

本音を言えば全員支払機構に登録してほしい。保険者の皆さんには「登録しない人には払わないでください、登録して厳しい書類を作った人だけに安心して支払ってください」と言いたい。しかしそれは難しいのでまずお願いしたいのは、支払機構に登録していない柔道整復師から通常のレセプトが来て、登録している柔道整復師からは内容の充実したレセプトが来たという時に『このようなレセプトを書いてくれれば支払う』と、登録していない柔道整復師に対して言ってもらいたい。同じものを作ってくれれば良いので、そのために我々はノウハウを提供する。

―他の柔道整復師団体との共同体的なものは考えているのか?

日本柔道整復師会の各県社団もいくつか訪問したが、「業界が一緒になって手を組んでいかなければこの業界は駄目になってしまう」「社団法人だけで考えてやっていてはだめだ」と話すところもあった。日本柔道整復師会の一部が動き出してくれたのは、保険者からの声が大きかったからだと思う。個人請求者についても、保険者の対応が厳しくなっている今は、新しい仕組みを作る上では好機ではないかと思う。どんな請求であっても通ってしまうのなら、新しい仕組みを作っても個人請求者は耳を傾けてくれないだろう。保険者が厳しい今だからこそ、皆で団結していいものを作ろうということに応じる環境が出来た。

―詳しい施術内容を付けるということになると、これさえ出せば請求が通ると思われてしまうのではないか?

審査は基本的には保険者に行なってもらうが、同時に専門家として支払機構でも審査する。怪しいものに関しては問い合わせをいただければ他の保険者への請求と比較して傾向などを確認できるので、それを基に判断してもらえればと思う。情報があれば全部払わなければならないということはない。

―患者の立場からすると、整形外科に行っても治らないから接骨院・整骨院に通い、治ってきたと思ったら不正請求で療養費が支払われず、せっかく回復してきていても通いにくくなってしまうという事例もある。

柔道整復師の治療を受けたことのある方は分かると思うが、怪我をしたところだけを治療しても治らないので柔道整復師は全体のバランスの中で治していく。だから施術部位が5部位も10部位もあっていい。しかし全て請求できるわけではない。だから、その中で公的な資金として出せるのはこれだけだという現実を作る。本案では、5部位でも10部位でも治療しても良いが、療養費請求できるのは2部位までとする。そこで不正が出てきたとしても、支払機構が照会をするので保険者が行なう必要はない。

―1人の患者に対して何年も施術し長期化されているケースに対してどう対応すればよいか?

長期施術の中には患者が少ないから長く引っ張ろうとしているケースもあるかもしれないが、患者の痛みや症状に対応している場合もあり、一概に悪いとは言えない。柔道整復師は全身のバランスを考えながら治しているので治療すると症状は良くなるが、変形なら変形が残った上でその症状を抑えているため日常生活を送るうちにそれがもとに戻ってしまうこともある。けれど悪化もしないので断続的に治療を行なう。しかしそれを療養費にどう反映させるかというのは別問題。本案では治療を制限しているわけではなく請求を制限している。長期の施術が悪いわけではないが、それをそのまま請求すべきではない。

―「類似負傷の施術期間と回数の算定」(資料参照)に示されているように、初回施術の60日間を過ぎたら30日間の保険請求休止とする場合、その費用は接骨院が負担するのか?

被保険者にも覚悟してもらわないといけない。例えば腰痛だとする。柔道整復師も「腰痛だから治りにくいが、治療しますか?全部保険ではできません」と初めから言わなければいけない。事前に施術回数が決まっていれば、患者には残り何日を大事に使おうという心理が働く。そういう意味でこれはひとつの行動基準を作っている。

総括として本多氏は、〝やはり柔道整復師の療養費は国が管理しているようで管理していない、規律があるようでない、責任を負うところがはっきりしていない。柔道整復師にはきちんとした人が大勢いるなかで、制度の不備を利用する悪徳柔道整復師もいる。きっちりした制度を作り、正していきたい〟と意気込みを語った。

今後、制度は実行の第一段階に入り、本年11月より約1年間、接骨医療臨床研修所付属のJB接骨院から『類似負傷用施術内容情報書』を添付した新しい形でレセプトを保険者に提出し検証を行なう。その後2~3年をかけて徐々に全国の施術所に広めていく予定となっており、本多氏は保険者に協力を呼びかけた。

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