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今回の柔道整復療養費改定案について考える

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延び延びとなっていた柔道整復療養費改定案がついに正式決定した。今回の改定内容は柔道整復師達の目にはどの様に映ったのであろうか。柔整ホットニュースでは明治国際医療大学 長尾淳彦教授に今回の改定案についての見解を伺った。

今回の柔道整復療養費改定案について考える

明治国際医療大学   長尾淳彦

療養費改定などに係る社会保障審議会医療保険部会第2回柔道整復療養費検討専門委員会(以下、専門委員会という)が平成25年3月26日(火)15時より厚生労働省講堂(中央合同庁舎第5号館2階)にて開催された。

第1回専門委員会が平成24年10月19日開催であったので5か月ぶりの開催である。

厚生労働省保険局医療課より事務局案として出されたのが下記の案である。


1. 改定率  0.00%

(理由)

  • 前回の専門委員会において、施術者側からは引き上げるべきとの主張があった一方で、保険者側からは引き下げるべきとの強い要請があったこと
  • 診療報酬改定率が0.00%であったこと

2. 適正化すべき項目

多部位施術の逓減強化
3部位以上請求の割合の全国平均は低下しているものの、なお大きな地域差があるため、さらなる見直しを行う。

【現行】3部位目の施術について、70/100に減額して支給

   ↓↓↓

【改定案】3部位目 60/100

3.評価を引き上げる項目

初期段階の施術料の充実
急性又は亜急性の外傷性の負傷に対する施術が支給対象とされていることを踏まえ、主として受傷初期段階での施術の充実を図る。

【改定案】

 現行引上額改定後
初検料1240円95円1335円
再検料270円25円295円
施療料(打撲・捻挫)740円20円760円
後療料(打撲・捻挫)500円5円505円

4. 適正化のための運用の見直し

打撲・捻挫の施術について、3ヶ月を超えて頻度の高い施術を行う場合に、支出申請書に、負傷部位ごとの経過や頻回施術理由を記載した文書の添付を義務づける
施術者が経済上の利益の提供により、患者を誘引することを禁止する
支給申請書における患者が署名すべき欄に、施術者が代理記入するのは、「やむを得ない理由がある場合」であることを「やむを得ない理由」の例示とともに、受領委任の協定等に明記する○支給申請書に患者が記載する事項として、郵便番号、電話番号を追加する
施術管理者に対し、柔道整復師名の施術所内掲示を義務づける
施術者に対し、療養費を請求する上での注意事項の患者への説明を義務づける

5.施行期日

○周知期間を確保する観点から、平成25年5月1日とする。


最終的には保険局長が「厚生労働省大臣に報告し、政府の責任により決定する」としたことから若干の修正はあるものの施行日は平成25年5月1日となりそうである。

以下、事務局案について考えてみよう。

適正化すべき項目―多部位施術の逓減強化

3部位以上請求の割合の全国平均は低下しているものの、なお、大きな地域格差があるため、さらなる見直しを行う。
【現行】3部位目の施術について、70/100に減額して支給
                                    ⇓  ⇓  ⇓
【改定案】3部位目の施術について、60/100に減額して支給

著者:「3部位以上請求の割合の全国平均は低下しているものの、なお、大きな地域格差があるため、さらなる見直しを行う」として3部位目の逓減が地域差を解消する対策とされているが本当にそうであろうか?「医科」に地域格差はないのでろうか?あるとしても診療報酬を逓減して均(なら)すような作業は行わないであろう。なぜ「柔道整復」だけこのような乱暴な逓減強化がおこなわれるのだろうか?

評価を引き上げる項目―初期段階の施術料の充実

急性又は亜急性の外傷性の負傷に対する施術が支給対象とされていることを踏まえ、主として受傷初期段階での施術の充実を図る。

著者:「急性」又は「亜急性」の定義を明確にすべきである。学校協会の教科書に記載されているものが定義ならそれを示さなければならない。「急性期」や「亜急性期」と混合されるなら柔道整復業界が名称も変更して周知すべきだと考える。

適正化のための運用の見直し

打撲・捻挫の施術について、3か月を超えて頻度の高い施術を行う場合に、支給申請書に、負傷部位ごとの経過や頻回施術理由を記載した文書の添付を義務づける。

著者:頻度の高いとは、月何回をさすのか?単に月何回というのでなくなぜ、それが頻度の高い施術なのかという厚生労働省見解を聞く必要がある。

支給申請書に患者が記載する事項として、郵便番号、電話番号を追加する。

著者:支給申請書に患者の郵便番号、電話番号の記載が必要なのかの説明を求め患者に了承を得る必要がある。患者がその記載を拒否した場合はどうするのかの議論もなしに決定するのは乱暴である。

著者:最後に「会計検査院」「行政刷新会議」など数年前から十数年前のデータや議論を持ち出したり、「柔道整復と医療機関との部位数」とを対比することに疑問符のつく「外来で対応可能な部位数1.22」など柔道整復諸悪論に正面から立ち向かい事実を追及することを業界は行わなければならないと考える。

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