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全国柔道整復師連合会 田中威勢夫会長から新年の挨拶が届く!

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社会保障審議会医療保険部会 柔道整復療養費検討専門委員会の委員でもある、全国柔道整復師連合会の田中威勢夫会長から、全国の柔道整復師に向けた新年の挨拶が届いた。田中威勢夫会長の業界に対する熱い想いがひしひしと伝わってくる内容となっている。

田中威勢夫会長

全国柔道整復師連合会 会長  田中 威勢夫

皆様、新年あけましておめでとうございます。

今年も皆様方のご発展と連合会の活動を祈念しつつ新しい年に向けた御挨拶をさせていただきます。

まずは、発端の話からになりまして恐縮ですが、柔道整復師の制度は、昭和11年の協定から始まった制度です。その後、変わることも変えることもなく、時代だけが先に進んでいったため、今や時代に取り残されて制度疲労ともいうべき事態を迎えていると思えてなりません。

時代は変わります、歓呼の声で迎えられた民主党への政権交代がひと時の夢であったかのように、自民・公明両党の政権奪取となりました。この状況において、私たち整復師会が取り組むべき問題は何か、新年にあたって、そこから話をさせていただきます。

まず第一に、保険請求に関して、近年、不正請求問題などがマスコミ等で取り沙汰されていますが、その起因というべき「傷病名問題」を解決しなくてはいけない、という思いを強くしています。

柔道整復師法に傷病名が全く記載されていないにも関わらず、なぜ療養費の支給基準が「骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷」に限定されてしまったのか、その原因や理由に言及すれば、昭和45年に柔道整復師法が提案された時の趣旨説明の中に、「骨折・脱臼・打撲・捻挫等」という文言が入っていることから始まっています。これが今の療養費の支給基準として、そのまま使われてしまっている、ということが全ての原因です。

この基準が今の時代と合っていないという問題があり、そしてこの問題は、柔道整復師の行為が医行為であるのか、というところにも行き着きます。柔道整復師の行為に関しては、「医業類似行為」であると規定する一部の解釈もあるようですので、まずは、行為の規定についての議論をしながら、しっかりした共通の認識を持つ必要があると思います。

我々の業界が一つになり、この、「<医行為>か<医業類似行為>かの問題」、さらには「非現実的な傷病名限定問題」を徹底的に議論し統一した見解にまでまとめ上げ、業界全体として交渉する力や態勢を持つことができれば、行政や政治も動かせると思います。

冒頭に記しましたように、政治状況の変化は、行政上の改革の大きなきっかけとなります。

現在、柔道整復術の対象傷病名は、いわゆる「骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷」という内容に保険請求上では定められていますが、例えば「腱鞘炎」や「変形性関節症」なども、実際には治療をしています。ただ、保険請求する上で傷病名を変えて出さなければならない訳です。この問題を解決するためには、今の制度を変えなければなりません。傷病名の限定がおかしなものであるからこそ、〝不正請求〟とされるわけです。傷病名問題だけではなく、根本的な問題の解決をはからなければ、この業界の先は見えてこないということです。

これを解決するには、保険請求のために傷病名をどう変えるか、という短絡的な話でなく、そもそも「柔道整復師法」には業務制限(第四章「業務」第十五条・第十六条・第十七条)しかないのです。5つの傷病名に限られるというのも、健康保険での取り扱い上で規定されているだけであり、柔道整復師法の制限とは矛盾しているのです。同じ傷病が、自由診療ならよくて、なぜ健康保険では扱うことができないのか。5つの傷病名に無理やり当てはめるのではなく、柔道整復師法に添った傷病名で診断し、それを健康保険でも取り扱えるように、規制の方を変えていくことで、未来が見えてくるのではないでしょうか。

これから協議する中では、いろいろ案が出てくると思います。もちろん、何でもやっていいという意味ではありません。細かく協議していくことが大事です。

これまでの活動の中でも「適正な傷病名での請求ができるように」という要望をしています。平成17年の国会質疑の中での、厚生労働省の回答は、「未だ検討中」でした。検討の時は終えて回答を出すべき時でしょう。以前、あえて「腱鞘炎」で保険請求をした柔道整復師の方がいました。昔なら「医師法違反」だと言われていましたが、今はそんなこと言われません。保険者が良いと言えば、どの傷病名で出しても支払うことに変わってきています。つまり制度自体がほころびだらけなのに、今の制度で運営するのは無理があるわけです。

医療費と療養費という話も関連してきますが、「療養費」というものは、医療ではなく医療の補完だという話なので、まずは、先ほど話した「柔道整復師の業務は医行為だ」という認識を、業界全体で確認し合わなければなりません。医行為である以上は「療養費ではない」、もちろん「療養の給付」でもなく、柔道整復師制度に見合った「給付制度」の新設が考えられます。

今までの活動は「行政を怒らせるな、医師会を怒らせるな、保険者とは仲良くやれ」と言う暗黙の了解の下で行ってまいりましたので、柔整業界の制度自体を変えることにまでは繋がってこなかったわけです。これまでの活動を見直し、反省し、新たな戦略に基づいて活動していく時代が始まっています。それには業界団体の意見がバラバラではいけません。まずは「日本の医療制度」、「私たちの柔道整復師制度」の矛盾を勉強し、話し合いましょう。

現在も厚労省は〝柔道整復師は医業類似行為者である〟との見解を変えていません。しかし、患者さんにとっては柔道整復師が診断しようが医者が診断しようが同じ診断です。制度というのは医師会のものではなく、国民のためのものです。我々の行為は医行為であるということ、その根本的なことを柔道整復師自身が認識すること、まずここから始めなければならないと思います。柔道整復師の行為は医療行為以外の何ものでもありません。骨折を整復したり、脱臼を治すこと、この行為が医療の真似事でしょうか? 医療以外のなにものでもありません。大事なのは“そこに”患者さんがいる、という話です。患者さんによってはアレルギー体質で薬が飲めない、飲みたくない、手術も嫌だ、出来るものなら自然に治したい、だから接骨院でも治療を受けたいと思う患者さんもいるでしょう。接骨院で治療を受けたい患者さんなら自由に掛かれる制度が大事だと思います。そうでなければ「医療選択の自由」は確保されないのです。

近年、この柔道整復師制度を排除しようとする動きもある、と耳にすることもあります。医師会・保険者・厚生労働省が何かを考えているのなら、冒頭の新しい政治状況を、こちらから積極的に生かすことも必要です。制度疲労なら制度を考える、法律が不備なら新たな議員立法を働きかける。まずは「傷病名問題」を解決する法律整備、これだけでも、不正請求とされるような状況は解決に向かうはずです。また、自分たちの自助努力で、現行の資格制度の中で保険を取り扱うことができるように研修制度の仕組みを作ることも考えられます。昔の柔整師は、整形外科や接骨院で修業して、先輩の先生方から色々なことを教わりながら新たに開業する形が主でした。今は学校を卒業して直ぐに開業に向かうため、保険制度も何も知らないままに請求してしまうような状況も起こります。開業前に2年間なりの研修を義務付けるような制度・体制づくりなどは、業界がまとまってこそ成しうることでしょう。

順序よく短期・中期・長期と計画を立てて実行していく、業界が一丸となって、新しい政治状況を利用するぐらいの取り組みで動けば、追い越された時代を、再び引き寄せられるはずです。

新年にあたりまして、少し固くなってしまったかもしれませんが、新たな年と新たな状況にあたって、当会が求めていく方向と皆様方のお考えの片隅に置いていただきたい事などを述べさせていただきました。本年も、皆様方のご協力のもとよりよき方向に向かわせていただくよう、是非ともお願い申し上げます。

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