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リアルライフを変えるヴァーチャル~VRによる身体機能回復への挑戦~

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令和3年3月13日午前10時から、JB接骨会館で「リアルライフを変えるヴァーチャル~VRによる身体機能回復への挑戦~」と題したセミナーが開催され、循環器内科医の原正彦氏が、「mediVRカグラ」の解説とデモンストレーションを行った。コロナ禍の開催ということで、柔道整復師と患者さんが限定されて出席。実技を体験、傾聴した。

原氏は、〝実際に機械を使っていただいて、患者さんに確認していただかないと中々信じることが難しい。日本で心筋梗塞の患者さんの心臓を治しても自宅に帰れない。自宅に帰るためには、心臓を治した後、いろんな体の不具合、例えば肩が痛いや主要痛があるとしてもその人が自分らしく日常生活を送れるところまでみて、初めて社会復帰だと思っています。多くの職種の方々と連携をしながら上手く患者さんを自宅に帰っていただくまで治療を行う、そして自分らしい生活をしてもらうところまでを目指していかなければいけないということで、大阪の豊中市に会社を作ってリハビリテーションの機械を作りました。2018年の経済産業省主催のジャパン・ヘルスケアビジネスコンテストでグランプリを受賞した「mediVRカグラ」は、バーチャルリアリティ(VR)を用いるゲームの反復を通じて、主に歩行障害のある人の姿勢のバランスと調整力、認知能力を高めていくことを目指しており、また国が育てようとしている企業にも選ばれています。VRという技術は、医療現場で30年以上使われてきました。しかしVRは、医療現場で使ってもそれ程効果が無いとこの30年間言われ続けており、それが今のスタンダードな考え方です。我々はそのスタンダードな考え方を打破してしまうほどの効果と全く違う発想で機械を作りました。具体的にはヘッドマンディスプレイといって映像が見れる機械を頭につけて、両手にコントローラーを持って、椅子に座って行います。椅子に座って手を伸ばしてもらう動作を機械で促していきます。今日で2回目のデモンストレーションですが、前回のデモンストレーションでは、歩くスピードや歩行が改善されるなど、或いは肩が痛いのが治るといった現象が起こりました。

1つ目は、歩けない立てない患者さんがスムーズに立ち上がるようになり、立って歩くに特化した治療介入です。
2つ目は、手が拘縮してしまっている患者さんの手がしっかりと動くようになる。
3つ目は、認知症の患者さんというのは、治すことが難しいと言われてきましたが、認知症のある患者さんでも改善することが出来ます。ただ皆さんのやり方と少し違うかもしれません。
4つ目は五十肩とか膝が痛いなどの慢性疼痛です。
この4つに非常に顕著な効果を出しています。

前回実際にデモンストレーションで行ったパーキンソン病の患者さんで、パーキンソン病のためにバランスが上手くとれずに歩けなくなってしまった。この「mediVRカグラ」を行う前とカグラを行った後の映像では、3m歩いてグルっと回って座るという動作で2秒位回復しています。2秒短縮というのはかなり劇的であり、使えば使うほどもっともっと良くなります。体重をしっかりと乗せるような動きをどれだけ行えるかがポイントです。やはり専門家が使ったほうが良くなります。柔道整復師のような様々な患者さんの体をよく診て触っている人が使用すると治療効果が高いと考えています。廃用症候群とかサルコペニアや骨折、膝関節障害に優れた効果があります。脳梗塞の後、10か月位経って手が拘縮してしまって40度肘が曲げられない、基本的に体が固定されてもう治らないようでしたが、患者さんが来られて「VRカグラ」のデモンストレーションを是非やってみたいということで行いました。

この中に7つの特許技術が使われています。特許ということは世界初ということです。世界初で、患者さんが治る仕組みを7つ埋め込んで、その総合評価としての治療結果が出ています。専門用語でいうと、脳の記憶の書き換えです。分かりやすく説明すると、今医療現場でやられているリハビリというのはスイカ割りによく似ているんです。スイカ割りの時には皆さん目隠しをして、目の前にスイカが置いてある。目の前にあるスイカを割ってくださいと言われますが、ここがスイカの中心だと確信を持って手を振り下ろすことは難しい。今のリハビリというのは、そういう感じで患者さんが行う動作をイメージしにくいが、これをイメージさせやすくしたのが、この「mediVRカグラ」です〟等、丁寧に解説した。

近年、リハビリテーション領域におけるVR技術の応用事例に関する報告が増えており、中でも大阪大学における産学連携活動によって生まれたリハビリテーション用VR医療機器「mediVRカグラ」 (株式会社mediVR 豊中市)の販売が2019年3月から開始されている。

その医学的理論根拠については、慢性疼痛が生じる機序にはfear avoidance モデルをはじめとする行動・心理学的機序や侵害刺激の持続的入力による長期増強、更に脳の可塑的変化によるmesocorticolimbicsystem の機能不全が関与しているといった報告がある。従って、慢性疼痛を考える上で身体機能などの器質的な側面にとらわれるのではなく、心理面や脳機能にまで及んだ多面的な考察が必要であり、VRは日常と異なる視覚環境を眼前にリアルに提供でき、3次元空間で自由に対象物を表示することが可能である。この特徴を利用することで患者の能力に応じた適度な強度の課題を設定し、楽しさを維持しながら運動を反復できるという利点が生まれる。これらの背景を踏まえ、VRが身体機能のみならず心理機能や脳内機構の改善の一助となるのではないかと考えたことが、原氏がVR医療機器の開発に着手した切っ掛けとなり、①VRを用いた運動トレーニングに伴い生じる脳皮質における神経支配領域の適切な再編成(reorganization)、②痛みの予測シグナル(prediction signal)の遮断、③VRコンテンツの持つ娯楽(entertainment)性による心理・情動機能の改善、④運動療法に伴う身体機能改善(exercise)の4つの機序である。またVR技術の強みの1つは、定量化が可能なことである。

「mediVRカグラ」の開発者である原正彦氏は循環器内科医で心筋梗塞を中心に診療にあたってこられ、米国心臓協会で世界若手研究者TOP5に3年連続で選ばれるなど研究分野でも認められていた人物である。〝日々の診療や学術活動だけで多くの患者さんに良い医療を提供することはできない〟として起業し、その時に注目したのが、リハビリテーションであり、心筋梗塞に脳梗塞が重なる患者さん達が体が不自由になり、リハビリテーションをせざるを得ない現状を多く見てきたこともあり、歩行のリハビリテーションをテーマにしたという。

VRゲームにしたのは、継続的に楽しく遊んでもらいながら効果を上げたかったこと。ゲームなら点数化できるのも魅力的であり、何所でも行えるものにするためには、専門家が傍にいなくても安全に行えることを担保しなければならないということで、座位で行えるようにしたとある。脳梗塞でもう歩けないと言われた人が杖なしで歩けるようになった例や認知症の患者さんが自分で積極的に食べられるようになった例などが出てきて、想像した以上の効果に驚いたとも、話している。

なにしろコントローラーを指し示すことで「あっぱれ」や「お見事」と画面に表示されるため、遊び感覚で楽しく行えるリハビリテーションは、患者さんにとって大きな朗報である。

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