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(公社)日本柔道整復師会第46回北海道学術大会開催

トピック

平成29年7月2日(日)、札幌コンベンションセンターにおいて『公益社団法人日本柔道整復師会第46回北海道学術大会』が開催され、道内から多数の柔道整復師および柔道整復師養成校の学生が参加した。

(公社)日本柔道整復師会第46回北海道学術大会開催
萩原正和会長

大会長である(公社)北海道柔道整復師会・萩原正和会長は〝全道各地より会員、研修員、会附属の北海道柔道整復専門学校の学生をはじめ、他の養成校の学生の参加のもと、学術大会を開催できたことに感謝申し上げる〟と挨拶するとともに〝今回、一般公開講座として札幌医科大学医学部細胞生理学講座の教授である當瀬規嗣氏をお迎えし、「新しい運動生理学―スポーツケアを中心に―」と題してご講演いただく。
我々柔道整復師が扱う運動器の怪我への対応や考え方、組織細胞がどのように活動しているのか、スポーツの現場で活躍する人だけでなく、すべての柔道整復師にとって大変重要な情報である〟と述べた。〝会員発表は論文発表が13題、実技発表が10症例、(公社)日本柔道整復師会保険部による発表、学生スライド発表が4題、また協同組合指定業者による講演が3題と盛りだくさん企画している。本日学会に参加されているすべての方々にとって実り多い一日としていただきたい〟と、当日のプログラムを紹介した。

工藤鉄男会長

学術大会長である(公社)日本柔道整復師会・工藤鉄男会長は、業界の課題を解決していくために様々な制度改革に取り組んでいるとして〝制度改革の柱となるのが、管理柔道整復師の要件強化だ〟と述べた。
〝これは地域住民から信頼される、道徳観を持った柔道整復師を養成することを目的としており、厚生労働省や学校協会とともに学生に不利にならない方法を考えている。学校教育改革では萩原正和会長にも尽力いただいた。また電子請求化を目指して、日本柔道整復師会は業界のリーダーとして厚生労働省とともに様々な研究を行なっている。

日本で生まれた柔道整復術はWHOにも認められている伝統技術で、医療環境が整備されていない国や地域に対する事業として、昨年9月よりモンゴル国の国立健康科学大学において柔道整復師を養成するカリキュラムが実施されている。北海道学術大会は今回で46回を数えるが、地域の医療・福祉と国民の健康増進のために同様の学会を全国11ブロックで行っている。研究成果を発表し、共有することでさらに地域に貢献できる。
近い将来、柔道整復師を地域住民に最も必要とされる職業としていきたい。そのためにも今日聴講したものを自身の経験に活かしていただきたい〟と述べ、業界の明るい未来を築いていくために協力を呼びかけた。

特別講演
「新しい運動生理学 ―スポーツケアを中心に―」

札幌医科大学医学部細胞生理学講座 教授 當瀬規嗣 氏

當瀬氏

當瀬氏は〝私は北海道柔道整復専門学校の講師を20数年勤めていたので、今日は私の講義を受けたことがある方が多いと思う。しかし皆さんが講義を受けた頃とは状況が変わり、話が変わってしまった。今回はその点についてお話していきたい〟として講演を開始した。

〝まず乳酸について話していきたい。乳酸は筋肉に溜まると疲れたり痛みが生じたりすると教科書にも載っていたが、これが全くの嘘だった。運動を始めるとまず速筋から使われる。FG線維を使うとその中にたまっているグリコーゲンを分解してグルコースを消費し、乳酸がたくさんできる。それが細胞の外にどんどん出てきて血液中を巡っていく。つまりFG線維を使うと、血中に乳酸が増えるという現象が起きる。そのために乳酸が増えると疲れるのだと信じられていたが、それはたまたま起きる現象で、本質とは何も関係がなかった。
それどころか、たくさん増えた乳酸はSO線維の方に運ばれて、ピルビン酸になって酸素を使って大量にATPを取り出してエネルギー源にする。つまり、乳酸が増えないと持久力が出ないということになる。これが20数年前に分かった。
さらに驚くことに、乳酸が筋肉の外側に増えると、筋肉が収縮する性能がアップするという実験結果が出た〟とし、乳酸は溜まっても悪いことは何一つない、むしろ人間の身体には大切なものだとした。

筋肉痛については〝運動中に生じる急性筋肉痛、運動後に生じる遅発性筋肉痛、筋線維断裂(肉離れ)がある。特に遅発性筋肉痛は、運動後数時間は生じず、24時間後位から起こり72時間後がピークとなる。一方で乳酸は、運動後数十分で消え始め、60分後には完全に消失するということが分かっている。
つまり筋肉痛の原因として、乳酸は全く関係がないということになる。
筋肉痛のメカニズムは、運動することにより目には見えない微細な損傷が起こる。
損傷を治すための反応として炎症が起こり、炎症が進行し治り始めると発痛物質がゆっくり増えるので次第に痛みが出る。血流が悪いと炎症で生じている発痛物質が流れ出にくくなり残ってしまうため、痛みが生じると考えられている〟と解説。
さらに、筋肉痛を治すためには〝筋肉をストレッチなどで伸ばし、緊張をほぐして血流を良くすること。有効な方法としては、静的ストレッチで筋肉を伸ばした状態を20~30秒保持する。一度ストレッチをすると筋肉が緩んだ状態が45分程度持続されることがわかっている。
遅発性筋肉痛の場合も冷やしても効果はなく、むしろ温めると抑制されるとわかった。運動後のケアとしては、静的ストレッチに加えて入浴で温めることが最も効果的だ〟とした。

最後に、〝これからのスポーツにおける体調管理として、トレーニング後の疲労をできるだけ速やかに取り除く方法を考えなければならない。スポーツの現場で指導する際には、積極的に静的ストレッチを行い温めて、睡眠を十分にとることが大切だと指導していただきたい〟と結んだ。

2017・柔道整復師と介護保険について
―柔道整復師の地域包括ケアシステムへの貢献―

公益社団法人日本柔道整復師会保険部介護対策課 三谷誉氏

地域包括ケアシステムとは?

三谷誉氏

地域包括ケアシステムとは、地域にある病院や介護保険施設、接骨院などの社会資源を有効活用していくための仕組み。地域包括ケアシステムを構築している背景には、社会保障制度に割く財源が少ない、現役世代が少なく人材が不足しているということがある。
具体的な内容として、入院日数がどんどん短くなってきている。昔は一度入院すると長期間入院することができたが、非常にお金がかかるため、国はできるだけ短くしていきたいと考えた。
そこで入院期間は一昨年には3週間、さらに今年4月には2週間を目指すということになった。こうして早期に退院した患者を在宅で看ていこうということで、市町村は多職種で連携していくために会議を行っている。
今、在宅医療に求められているのは「顔の見える関係」だ。その中でまず、我々柔道整復師は骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷の施術ができるということを他の職種にも知ってもらわなければならない。各職種間で情報を一方通行ではなく相互にやり取りし、連携強化することが重要だ。

地域包括ケアにおける柔道整復師の役割

特別養護老人ホームやデイサービスは、生活の機能訓練を強化することが国から求められている。柔道整復師も個別機能訓練として、在宅の環境を見てアドバイスができるようになれば、機能訓練の分野からも声がかかるようになるだろう。
地域包括ケア実現のため、地域支援事業の枠組みを活用し、医療と介護の濃密なネットワークを構築しきめ細かなサービスを提供すること、高齢者が生きがい・役割をもって生活できるような地域を実現することが必要となる。
その中で柔道整復師もリハビリ専門職として十分に参入可能であり、スキルを活かせるということを市町村にアピールしていくことも大切だ。
新しい事業としては、介護予防・日常生活支援総合事業というものが作られており、多様な担い手による多様なサービスの充実が進められている。サービスの指定基準は市町村ごとに異なる。
地域のニーズに合わせ、地域ネットワークに入って顔が見える関係を構築し、市町村職員には自分たちには何ができるのかを理解してもらう。
また、地域のためにやる気のある姿勢を見せることが大切だ。

認知低下の予防の視点

地域包括ケアの中で、認知症は避けることができない。
認知機能が低下し、短期記憶に問題があり日常生活に支障がある場合を「認知症」という。
生活の継続性が低下して施設入所の可能性が高くなるため、軽度のうちに発見することが重要となる。機能訓練指導員としては、早期の認知症は診断がされていない場合もあるのでIADLやADLが低下したときに、どこに問題があるのかを考えていかなければならない。

全発表終了後、発表者表彰が行われ、本学会は盛会のうちに幕を閉じた。

発表者表彰

研究論文発表

  • 肩こりのセルフケアによる二次損傷の可能性について小川進(十勝ブロック)
  • 整骨院における下肢軟部組織外傷のリスクマネジメント西家洋昭(札幌ブロック)
  • 腰部痛に対するハムストリングス筋の運動点アプローチによるFFDと疼痛の変化畑毛康彰(札幌ブロック)
  • 手指の疼痛緩和に対する関節モビライゼーションの有効性に関する一考察坂本忍(函館ブロック)
  • 第2-3-4中手骨多発骨折の一症例西根央(札幌ブロック)
  • 急性腰痛症に対する超音波治療の有効性阿部真二(岩見沢ブロック)
  • コーレス骨折における超音波治療(LIPUS)の一考察中島大介(札幌ブロック)
  • コンビネーション治療の効果について村井武男(滝川ブロック)
  • 体幹から下肢にかけての軽度損傷の治療(施術)熊谷元幸(日胆ブロック)
  • 外傷性頚背部痛に対する経皮的電気刺激と微弱電流の有用性についての一考察松濱広明(小樽ブロック)
  • 関節可動域とケガの関連性近藤洋文(旭川ブロック)
  • 網走市の地域介護予防活動支援事業について長尾敦(北見ブロック)
  • アンケートによる高齢者の運動実践事業について相馬孝至(旭川名寄連合)

実技発表

  • SSH現場でのテーピングの実際吉田英司(札幌ブロック)
  • 橈骨下端骨折の整復について佐藤全徳(十勝ブロック)
  • 橈骨下端骨折(コーレス骨折)
    ~マサ板を使用した枕子・副木副子の作成及び固定法の検証と伝承~
    釧路整骨研究会(釧路ブロック)
  • 当院で行っている肩関節前方脱臼の整復方法近谷忠美(函館ブロック)
  • 下肢の包帯厚紙副子固定法沢田守(札幌ブロック)
  • 橈骨遠位端骨折の拘縮後療(手技療法)黒田美保子(名寄ブロック)
  • 足関節捻挫における下腿部の筋緊張の緩和法中上勝(小樽ブロック)
  • 中高年の体幹、上肢、下肢のストレッチ法長尾隆之(日胆ブロック)
  • 手関節捻挫の整復と有窓副子による包帯固定中西睦男(旭川ブロック)
  • 肩関節脱臼整復法中西誠(北見ブロック)

学生スライド発表(附属北海道柔道整復専門学校)

  • 筋肉に負荷を与えた時の筋肉への影響について高口翔(昼間部3年)
  • 色彩と筋力の関係について荒谷翔(夜間部3年)
  • 運動による膝蓋腱靭帯の変化について山崎晃誠(昼間部2年)
  • 伸縮テープと疼痛の関連性について真鍋匡聡(夜間部2年)

物理・理学療法の実際と実技

  • 伊藤超短波(株)が提案するEMSの有効な使用法伊藤超短波株式会社 加藤寛司
  • 運動器のサポーティングシステムメーカーが推薦する未来の整骨院像
    ~院内でできる簡単なテストを用い運動器の健康チェックサービス~
    ダイヤ工業株式会社 山﨑圭太
  • 柔整業界を取り巻く環境と超音波エコーの活用について株式会社エス・エス・ビー 富田孝次
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