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『第16回日本スポーツ整復療法学会大会』が開催

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平成26年10月25日(土)と26日(日)の2日間に亘り、東京都千代田区にある日本大学桜門会館において『第16回日本スポーツ整復療法学会大会』が開催された。今大会では、会員による一般研究発表が20題発表された他、シンポジウム2題、特別講演2題、実技ワークショップや企業展示が行われた。

第16回日本スポーツ整復療法学会大会

専門分科会シンポジウム(スポーツ・ポダイアトリー部会)
「柔整療法における足部外傷について」

専門分科会シンポジウム

「柔整療法における足部外傷について」
入澤 正 (初石接骨院)

腰痛の8割は原因不明と言われているが、欧米足病医学の中には足部の問題が腰部に影響を与えているとする文献もあり、足部の問題から腰痛を起こしているのではないかと考えられる。現在、我が国には欧米やオセアニア等に存在する足病医師の養成機関(大学)がなく、足病医の存在や認識が必ずしも高くないのが現状である。柔道整復師は、国民病とされる「腰背部痛発生と足外傷との発生メカニズムとその診断法と治療法」の研究と症例を積み重ねる必要がある。

「“歩行・運動の道具”としての靴選び」
髙橋 良典 (高橋良典整骨院)

本来靴の役割は地面と接する足を外的な刺激から守ることである。“歩行・運動に必要な道具”としての靴の正しい選び方として、「サイズ計測」、「シャンク&フレックスポイント」、「ヒールカウンター」の3項目のそれぞれの理由を知っておくことが重要。悪い靴を履くと弊害として治りにくい足部外傷が起こることもあり、悪い靴は身体を痛める道具となってしまっている。“歩行・運動の道具”という視点から靴を選んでみたらどうだろうか。

「シンスプリントに対する診断と治療」
佐々木 和人 (佐々木接骨院)

シンスプリントは難治性の場合も多く、その理由は患者側(「練習量を調整できない」「ウォーミングアップ・クールダウンの不足」など)と治療者側(「治療法が適当ではない」「競技特性を理解していない」など)の双方にあると考えられる。患者の複雑で多様な主訴の診断と治療には、国内外の知識(情報)に基づいて研究(症例研究)しなければならない。足部外傷は欧米の足病医学ではBiomechanics的考察は必須の視点である。我が国の柔整学にとって将来の新しい、かつ特異的な研究的・治療的分野であると考えられる。

特別講演1
「スポーツ事故による裁判例について」 本多清二 (弁護士)

本多氏

本多氏は、〝スポーツ事故だから特有の民事法のルールがあるわけではない。普通の不法行為ルールをスポーツ事故に適応していくということである。ただ、スポーツ事故は大多数が学校事故と関係している〟と前置きした上で、講演をスタート。スポーツ事故が起こる原因として、記録への期待や参加者の健康管理の問題などを挙げた。最近の裁判例からみた不法行為上のスポーツ事故(責任原因からの類型)として、指導・監督上の責任、スポーツ施設等の設置に関する責任、競技上の事故に関する責任、事故発生後の対応についての責任、過失相殺等についてそれぞれ解説。その他、スポーツ事故責任の注意義務(その範囲と基準の設定)として、予見義務、回避義務、危険の引受けなどの解説を行った後、実際に起きたスポーツ事故の事例について解説を行い、講演が終了した。

学会大会委員会シンポジウム
「柔道整復師業界における全国組織学術団体の現状と展望」

学会大会委員会シンポジウム

司会の佐野裕司氏(東京海洋大学)より〝柔道整復師の業界には、全国組織の学会は3つしかない。今回は学会同士の交流も含め、それぞれの学会に特徴や将来の展望などをお話しいただきたいと思い、このシンポジウムを企画した〟と、このシンポジウムの趣旨を説明。その後、山口登一郎氏(日本柔道整復接骨医学会)、坂本哲也氏(日本超音波骨軟組織学会)、白石聖氏(日本スポーツ整復療法学会)より、各々の所属する学会の概要や特徴、研究活動の現状や今後の学会運営の展望などが紹介された。どのシンポジストも学会の垣根を越えて協力し合うことが重要だという見解で一致していた。

特別講演2
「地域包括ケアシステムと保健医療・福祉・介護の関わり」 笹本枝里(医療法人沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院地域総合医療センター医療相談室)

笹本氏

この講演で笹本氏は、平成12年4月に施行された介護保険法からこれまでの介護保険制度を巡る経緯、社会保障制度改革の方向性、地域包括ケアシステムなどについて、スライドを用いわかりやすく解説。高齢者は痛みがあると活動を縮小してしまうため、痛みをとるための方法を知っている柔道整復師は介護予防の分野でも力が発揮できるのではないかとの見解を示した。しかしその一方で、柔道整復師がどのような力を持っているかを知る機会が中々ないのが現状だと問題点を指摘。包括的マネジメントを行っている「在宅医療提携拠点」「地域包括支援センター」「ケアマネジャー」などに、柔道整復師がこのシステムの中でどのような力を発揮できるかというPRをしていくことが重要だとし、〝柔道整復師の能力の活用法を提案できる機会を得ればもっとこのシステムの中で皆さんの力が発揮できるのではないか〟と語った。

今大会ではこの他にもCHO中国手技療法研究所代表・張軍氏による「中国整脊推拿療法の臨床応用」と題した学会大会委員会実技ワークショップが開催されるなど、プログラムが充実した大会となった。

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