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日本超音波骨軟組織学会第13回学術総会 開催

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平成25年10月13日(日)、名古屋市のダイテックサカエ貸会議室クリエイトホール(6階)に於いて、日本超音波骨軟組織学会第13回学術総会(全国大会)が行われた。

日本超音波骨軟組織学会第13回学術総会
山田直樹学会会長

学術総会は田中和夫学会副会長の開会の辞でスタート。続いて壇上に上がった山田直樹学会会長からは〝今回で学術総会は13回目を迎えるが、初めて名古屋で開催することとなった。昨今、業界ではエビデンスの構築や学術の確立の必要性がよく叫ばれているが、本学会が柔道整復術の確立や強化に役立てればと考えている。私自身もまだまだ勉強中の身で分からないことだらけだが、基調講演と共に13演題をしっかり聞いて勉強させていただきたいと思う。明日からの診療に役立てるように大いに勉強して活発な意見交換をしていただきたい〟と挨拶があり、学術総会は基調講演へと移った。

 鵜川眞也教授

基調講演では名古屋市立大学 医学研究科 機能組織学分野 鵜川眞也教授による「酸感受性イオンチャネルの痛み・痒みへの関与について」と題した講演が行なわれた。講演前半は体が刺激を受けてから反応するまでのメカニズムや感覚などについて、後半では鵜川氏が主に研究しているという酸による痛み・痒みについて解説がなされた。

からだは電気仕掛けのロボット

暑さ・寒さなど外界から伝えられる感覚は全て受容器(感覚器)で電気信号に変換され脳に伝達される。電気信号に変換された刺激はシナプスを介して神経から神経へと伝わり、筋肉の収縮など効果器の反応を引き起こす。電気信号を流す「イオンチャネル」と呼ばれるたんぱく質はイオンを透過させる役割を持つが、温度変化に反応するものや振動などの触覚により反応するものなど様々な種類が存在する。

痛覚とは?

感覚神経はその太さによって伝達する信号や伝達速度が違う。痛みは、痛みを感知する神経である侵害受容器が興奮して初めて起こる可能性がある。細胞が壊れると、細胞が含有するカリウムイオンがあふれ出し、感覚神経を興奮させるために痛みが生じる。またミトコンドリアなどに含まれる酸が流出することにより直接神経が刺激されることも痛みの原因となる。

酸による痛みとイオンチャネル

酸による痛みには、心筋梗塞などの虚血性疾患、慢性関節リウマチなどの炎症性疾患、筋肉疲労などが挙げられる。これらは局所に酸(水素イオン)が蓄積することによる。酸に反応し開くイオンチャネルとしては、ASICチャネル(酸感受性イオンチャネル)とTRPV1(カプサイシン受容体)が良く知られている。酸でもpHが中性に近いものではASICが痛みを引き起こし、より酸が強いpH6以下になるとカプサイシン受容体も反応する。

かゆみ神経と酸感受性イオンチャネル

ASICまたはカプサイシン受容体が欠損したマウスと野生のマウスにそれぞれクエン酸を塗布したところ、野生のマウスに比べ、ASICやカプサイシン受容体の欠損したマウスはクエン酸を塗った箇所を掻く回数が少なかった。またASIC、カプサイシン受容体の阻害剤を注射した場合も同様に掻く回数が減少したことから、ASIC・カプサイシン受容体はかゆみに関与していると考えられる。

約1時間という短い時間であったが、スライドを用い解りやすく解説が行なわれた。

基調講演後に行なわれた研究発表では、昨年の約2倍に相当する13演題が発表された。各研究発表後にそれぞれ質疑応答の時間が設けられたが、いずれの発表に対しても積極的に質問する参加者が多かったことが印象的であった。

奥村卓巳氏

その後には奥村卓巳氏を講師に迎えて会員向けセミナーが開催され、超音波観察装置の特徴やルール、用語の説明やプローブの種類などの超音波観察の基本を解りやすく説明した他、足関節・足部に焦点を絞り、各部位の観察方法等を細かく解説。セミナー後半は参加者が各所に用意された超音波観察装置に集まり、熱心にインストラクターから実戦形式で超音波観察装置の使用方法の指導を受けていた。

会員向けセミナー

セミナー終了後の閉会式では諮問委員・理事竹市勝氏より研究発表の優秀賞が発表され、最優秀賞には「有痛性外脛骨(TypeⅡ)の超音波観察が診断に巧を奏した一例」を発表した大瀧晃氏、優秀賞には「アキレス腱の超音波解剖」を発表した勝田浄邦氏がそれぞれ受賞した。

最後に川上泰雄学会副会長より〝これまでこれだけの数の研究発表はなかったと記憶している。このような一般発表が多くなると学会としても充実したものとなるに違いない。今後とも研究の発表やジャーナルに論文を投稿していただき、皆で学会のレベルを上げていきたい〟と閉会の辞が述べられ、本学術総会は盛況の内に幕を閉じた。

外傷を専門的に扱う柔道整復師にとって、もはや超音波観察装置は必須のツールであると言っても過言ではない。まだ業界全体に普及しているとは言い難いが、このような学会が発展し、すべての柔道整復師が超音波観察装置を扱うことが出来る日が来ることを期待したい。

『研究発表』

  • 「コーレス骨折における伸筋腱第2区画の移動」サンマルシェわたなべ接骨院   ※錦戸  成孝、大川  誠一
    名古屋市立大学大学院医学研究科機能組織学   渡辺  正哉
  • 「ベーカー(Baker)嚢腫破裂症例」サンマルシェわたなべ接骨院   ※大川  誠一
  • 「アキレス腱の超音波解剖」九州医療専門学校   ※勝田  浄邦
    久留米大学医学部解剖学講座   嵯峨  堅、山木  宏一
  • 「学童期野球肘における超音波観察の有用性
    -投球時痛の有無による各徒手検査との比較において-」
    ヤマモト整骨院   ※山本  幸治
  • 「アキレス腱断裂の保存的療法における一考察
    ~超音波観察による経時的変化~」
    桂岡接骨院   ※梅田  和典
    TAKEDA GROUP   武田  哲也
    札大前接骨院   亀山  千慧
  • 「後脛骨筋腱の描出方法
    -外脛骨の症例に対するアプローチ方法の考察-」
    おおさと康復接骨院   ※矢島  勇
  • 「足関節底屈動作中の下腿三頭筋の筋束動態と足部変形の生体計測
    -超音波法と3次元動作解析によるアプローチ-」
    早稲田大学スポーツ科学研究科   ※塙  真太郎
    早稲田大学スポーツ科学学術院   坂口  正津、川上  泰雄
  • 「円皮鍼の効果と超音波診断装置における筋滑走性の有用性について」医療法人一裕会辻クリニック   ※立山  直、福田  亮
    森ノ宮医療大学保健医療学部   澤田  規
  • 「手術適応とされた第1中足骨基部3parts骨折における
    超音波診断装置の有効利用法」
    まえだ鍼灸整骨院   ※前田  尚利
    おくやま整骨院   奥山  建志
    森ノ宮医療大学保健医療学部   澤田  規
  • 「有痛性外脛骨(TypeⅡ)の超音波観察が診断に巧を奏した一例」自衛隊体育学校スポーツ科学科   ※大瀧 晃
    帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科   竹内  京子
    至聖病院   堀川  治
    自衛隊体育学校   藤木  崇史
  • 「アキレス腱断裂保存治療体験報告」渡辺接骨院   ※渡辺  孝也
  • 「下腿三頭筋内側頭挫傷に対する固定の重要性」麹町白石接骨整骨院   名古屋大学大学院医学系研究科機能組織学
    ※白石  洋介
  • 「膝関節の複合損傷に対し、超音波診断装置を有効に使用した1例」おくやま整骨院   ※奥山  建志、原口  卓人
    森ノ宮医療大学保健医療学部   澤田  規
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