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『「匠の技 伝承プロジェクト」2023年度第4回指導者養成講習会』開催

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2024年2月11日(日)、日本柔道整復師会会館(東京都台東区)において、『「匠の技 伝承プロジェクト」2023年度第4回指導者養成講習会(第8回新規重点部位講習)』が開催された。本講習会では、足指の骨折・脱臼の整復固定実技実習と超音波観察装置による観察実技実習が行われた。

本講習会は、施術の平準化の推進、個々の施術技術の安定を目的として、下記の考えのもと計画的に実施されている。

  1. プロジェクトの趣旨である骨折・脱臼の施術経験が少ない会員への技術指導を行う
  2. 骨折・脱臼の整復・固定の基本技術の共有化を目指す
  3. 超音波観察装置の正しい取扱いを学び施術を進めていく上での補助機器とするための指導と普及活動を行う
竹藤敏夫副会長

公益社団法人日本柔道整復師会・竹藤敏夫副会長は〝本講習会も今回をもって1段階が終了する。今年4月からは指導者候補の先生方による各都道府県での講習実施を予定しており、すでにスケジュールを組んでいる都道府県もある。多くの先生方に受講していただき、我々の伝統である柔道整復の技術を習得していただきたい〟と挨拶。

森川伸治副会長

続いて、森川伸治副会長は〝新規重点部位講習は今回で8回目となる。近年は骨折・脱臼に遭遇する機会は少ないが、一朝一夕でその整復・固定を理解することはできない。技術の向上を目指して繰り返し練習を行うことに意義がある。指導者候補の先生方には、各都道府県で骨折・脱臼の施術経験の浅い若い先生方へのご指導をお願いしたい〟と述べた。

徳山健司部長

徳山健司学術教育部長は、〝「匠の技 伝承プロジェクト」は単なる技術の継承ではなく、本プロジェクトにより平準化した技術を身につけることで柔道整復術のエビデンスが構築できるのではないかと考えている。それが結果として将来的に柔道整復療養費を守ることにもつながる。指導者候補の先生方にしっかりと技術を習得していただいたうえで各県で指導を行うことが重要であり、皆様のご理解とご協力をお願いしたい〟と改めて本プロジェクトの趣旨説明を行った。

整復・固定施術技術実習

講師 山口登一郎氏

第5中足骨骨折(下駄骨折)の整復・固定

前足部外側には様々な骨折が考えられる。内返しにすることにより、立方骨や踵骨の裂離骨折を起こしている可能性があるため十分に注意し、しっかりと鑑別を行うことが必要となる。

患者は背臥位とする。両母指球で第5中足部を挟むようにして第5中足骨の遠位端を把持して末梢牽引する。骨折部が飛び出していることがあるため、牽引後、突出部に直圧を加えて整復する。

固定ではまず、綿花をガーゼで包み楔状にした足底板を作成する。足底板は薄い方を外側、厚い方を内側として土踏まずの下に挿入する。前足部全体を綿花で包んでからアンダーラップを軽く巻き、70度前後のお湯につけて軟化させたプライトン副子を患部に装着して採型する。その際、プライトン副子の穴を潰さないように気を付ける。早く硬化させたい場合はコールドスプレーを使用する。プライトンが硬化したらアンダーラップを外し、再度プライトン副子を当てて包帯で固定する。しっかりと固定することで治癒の促進に繋がる。

足底板は足底全体ではなく土踏まずの部分だけにすることで、アーチをサポートし、骨折部の負担を減らすことができる。また、足底板は綿花で作成しているため、過重により足底にフィットさせることができる。

第5足趾骨折の整復・固定

まずは固定具を作成する。足関節が直角になった肢位でアルフェンスをカットする。アルフェンスの切断面は鋭利になるため、やすりで角を落とすようにする。また、アルフェンスの足底側は長すぎると小指球にあたって痛みが生じる場合があるため、ある程度短めにしたほうがよい。

第5趾は椅子の足や角にぶつけるなどして外反変形しやすい。アライメントを整えるためバディとして第4趾に合わせて整復する。末梢骨片が小さく滑りやすいため、ゴム手袋を装着して牽引を行う。末梢の太くなっている部分に術者の指をひっかけるようにして中枢端を把持し、アライメントを整える。一時性外力の方向によって牽引方向は異なるが、中枢片に合わせて末梢片を整えるということが基本となる。

バディで固定するため、第5趾と第4趾の間に綿花枕子を挟んでテーピングにて固定する。その後、8裂包帯で下巻きを行う。足趾は血行が悪くなりやすいため、軽く巻き圧迫されないようにする。その上からあらかじめ成型したアルフェンスを当ててさらに包帯で固定する。この際、歩行時に趾の先端に圧力がかかり痛みが出るのを防ぐため、趾の先端とアルフェンスの間に多少の隙間を空けておく。

総括として山口講師は〝皆さん良く出来ていたが、中には的を射た固定になっていない方もいた。再確認・復習していただき、地域の先生方に指導していただきたい〟と評した。

超音波観察装置取扱技術実習

講師 小野博道氏

第5中足骨骨折は、まず触診でどの部分が折れているのかを確認することが重要。背側から第5中足骨基底部を長軸で描出する。基底部がゴツゴツとしており、人によっては段差が出て線状高エコーが途絶える場合があるが、圧痛がなければ骨折線ではない。そこから外側にずらすと段々と平坦になってくる。短腓骨筋を観察するとfibrillar patternが見え、それが第5中足骨の基底部で停止している。下駄骨折ではこの線状高エコーが途絶える。短腓骨筋腱はプローブを立てて、外果の後方に向けるようにして観察すると良い。次に、近位部から第5中足骨を短軸で観察する。特徴として、近位部の線状高エコーは丸みを帯びており、骨幹部は平坦な形状をしている。短軸で観察することで骨折線がどのように入っているかを確認できる。

第5趾の観察では、長軸で背側・足底から観察する。骨折がある場合、末節骨から中節骨に骨折線が入ることが多い。中節骨と末節骨が癒合している人もいるが、外力を受けてDIP関節に線が入ったことで、骨折のように痛みが出てしまう人もいる。その場合は健側と比較し、DIP関節が癒合していないか確認する必要がある。第5趾は屈曲していることが殆どなので、術者は下から支えて伸展させ、エコーゼリーを多めにして観察すると良い。

小野氏は〝エコーはしっかり正しく使用することで医師との対話も確実となる。裾野を広げるためにも、指導者の方々には正しい観察技術を習得していただき、地域の先生方に広めていただきたい〟と総評した。

本講習会は、金子益美理事による閉会の辞で幕を閉じた。
来年度からは各地域において指導者講習を受けた柔道整復師による講習が開始される予定だ。

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