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日本医学協会主催『第44回健康指導講習会』が開催!!後編

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フレイルを予防し免疫力を高めよう!〝身体面と食生活から健康を考える〟をテーマに、日本医学協会主催の第44回健康指導講習会が、2022年10月23日午後1時より池袋芸術劇場で開催されました。

第一部の内容はこちらをご覧ください。

第二部『低たんぱくの予防として、たんぱく質の上手な摂り方と栄養バランスの取れた食事の提案』

『低たんぱくの予防として、たんぱく質の上手な摂り方と栄養バランスの取れた食事の提案』と題して、日本医学協会理事・中野区フリー活動栄養士会管理栄養士・元日本女子大学教授・飯塚美和子氏が講演を行った。

飯塚美和子氏

飯塚氏は、〝食物の果たす役割について、見ていただきたいのは、食品群です。たんぱく性の食品は、体の機能を調整するだけではなく、体のいろいろな酵素、抗体、ホルモン等の原料となり、いろいろなところに関わっているので大事です。低栄養になると体重が減少(筋肉や骨の減少)し、 代謝は筋肉の中で行われているので代謝機能が低下します。免疫力の低下は感染症や疾病の悪化に繋がり、呼吸機能の低下は、肺炎に繋がります。運動機能の低下は第1部でお話がありましたようにフレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドロームに繋がって、骨粗しょう症は転倒・骨折に繋がります。こういったフレイルになると生活自立度の低下に伴う要介護の上昇に繋がってくるということで、低栄養は避けたほうが良い。そういった要素を一つずつ理解していただけると良いと思っています。

低栄養が起こる原因は、栄養素の摂取不足と食事の食べ方の不適切がありますが、疾患としては消化吸収障害(消化器の病気等)があり、また癌などによる栄養素の消費の増大、栄養素の利用障害による肝機能障害もあります。これらはみんなが知っていることですが、疾患を除けば何といっても不適切な栄養管理が一番大きな存在で、食事の食べ方の不適切化に繋がるため、どうやって食事を食べていったら良いのかが大事になってくると思います。

フレイルには身体的なフレイル、認知・精神的なフレイル、社会的なフレイルがあります。サルコペニアは骨格筋の機能低下であり、もう1つはロコモティブシンドロームという運動器の障害によって起立、移動(歩行)機能が低下します。一方、メタボリックシンドロームがありますが、65歳以上の高齢者はメタボの考え方を変えようと言われており、65歳以下の人はメタボに気をつけなければいけませんが、それ以降の人は考え方を変えてフレイル予防に専念して欲しいという風に考えています。

フレイルとは、虚弱(Frailty)から作られた日本語であり、1.体重の減少、意図しない年間4.5㎏または5%以上の体重減少。2.筋力(握力)の低下、標準より20%以上の低下、握力は男性<28㎏女性<18㎏。3.疲労感、わけもなく疲れたような感じがする(倦怠感)。4.歩行速度の低下、歩行速度が1m/秒低下。5.身体活動①軽い運動・体操をしていますか?②定期的な運動・スポーツをしていますか?③全く何もしていない。これら1から5までの中で3つ以上が該当する場合に一応フレイルと呼んでいます。また家庭には通常、握力計が無いのでペットボトルの蓋や調味料の蓋が開かない場合など、握力を表す1つの指標になるため、〝ペットボトルの蓋を開けられますか?〟と聞く等して判断しています。

サルコペニアというのは、筋肉量の減少をいい、これはRosenbergという人が提唱した比較的新しい造語です。加齢に伴う筋肉量や筋力が低下してバランス障害や歩行障害を引き起こす状態を指します。大体70歳以上になると20代の時に比べると骨格筋の面積が25~30%減少し、筋力が30~40%減少します。50歳以降は年間1~2%程度減少します。歩行速度が1m/秒以下になるとサルコペニアと考えられます。それが進んでいくとどうしても要介護、寝たきりへと進んでいくことになります。

またロコモティブシンドロームとは、運動器症候群と呼び、2007年に日本整形外科学会が提唱した概念で、運動器の障害によって起立、移動(歩行機能)が低下した状態と定義されています。ロコモティブシンドロームの重要な病気としては、変形性膝関節症、変形性脊椎症、骨粗しょう症、これらがロコモを形成する重要な要素になります。先にお話がありましたようにトレーニングによりある程度の予防は可能だということです。骨粗しょう症は、カルシウムだけではなく、コラーゲンというたんぱく質が働いており絶えず作り変えられています。骨は絶えず、破骨細胞で壊され、造骨細胞が新しい骨を作っています。成人はこのバランスがとれていますが、高齢者になると造骨細胞の機能が段々低下してくるので骨量が減少してきます。骨格筋のピークは大体40歳くらいと言われていますが、大体骨格筋が20%減ると筋力低下が起こります。30%減ると座位保持が困難になり、40%位低下すると肺炎になって死亡率が非常に高い。ということで、やはり骨格筋の低下は健康を非常に左右する訳です。「何が原因で転びますか?」というアンケートがありますが、やはり筋肉が減少するから転びやすくなっていく。そうするとどうしても死亡率に影響していくことになります。

生理機能が一番低下していくのは、腎機能ですが、コロナになって高齢者は肺炎の率が非常に高い。やはり肺の機能がどのくらい低下していくかということを、ある程度知っておくということは良いのではないでしょうか。ただし全ての身体機能は同じように低下していくのではなく、人によっても違うし場所によっても違います。腎機能にはいろいろありますが、腎臓は血液を濾過して、ある程度濃縮しています。ただし、高齢者はこの濃縮機能が弱ってくるので夜間に尿の回数が多くなるのです。しかしちゃんと水分を補給しないと脱水症になります。〟等、述べた後に〝つまり現象はよく伝わっているけれど、「何故か?」というところが中々伝わっていない。先ず理由をちゃんと説明すれば、それは直ぐに現象と直結して予防に繋がるのではないでしょうか。つまり、「何故か?」というところに気をつけてしっかり伝えていく。食事の支度を誰かがやってくれる人が居るとなると自分は動かなくなる。やはり自分で動いて日常同じようなことをすることが健康に繋がるということです。〟と明言した。

タンパク質の役割

〝また、筋肉を丈夫にする方法としては栄養素のバランスが大切であり、筋肉に必要な栄養素で、一番重要なのはたんぱく質である。筋肉は絶えず作り変えられている(新陳代謝している)。体内の細胞の種類により作りかえられる速度が違う(髪の毛は伸びる)。例えば、赤血球の寿命は120日であり、腸粘膜細胞は早い。

新陳代謝を維持するには、たんぱく質の適量を毎日取ることが必要です。たんぱく質の適量は1.0~1.2g/㎏/日で、毎日摂取が必要。新陳代謝を助けるには、必ずビタミンとミネラルが必要。身体を動かすにはエネルギーが必要であり、エネルギーを作るには、糖質・脂肪・(たんぱく質)・ビタミンB群(B1・B2ナイアシン、パントテ酸)、鉄、酸素が特に必要です。たんぱく質の役割は、1.体の組織や細胞の維持に(発育期は成長にも)必要。諸臓器・筋肉・皮膚・血液成分・骨の弾力性成分。2.酵素・ホルモン・抗体・免疫物質をつくる。3.必要な成分の体内での運搬や貯蔵を行う。重要な成分を運ぶのにたんぱく質が一緒になって運んでくれる、例えばフェリチン(鉄の貯蔵)・ヘモグロビン(酸素の運搬) ・リポたんぱく質(脂質の運搬)がある。

もっと重要であるのは4.体液の調節をしていることです。それらには

  • 浸透圧の調節で、血液と組織液中のたんぱく質量の差によりむくみを防ぐ。
  • 酸性・アルカリ性の調節を行う。たんぱく質は酸性にもアルカリ性にも対応できる。
  • 電解質(溶けているミネラル)の量を調節。細胞膜の必要に応じミネラルの出し入れを調節する。

健康被害がいち早く出るのは4番目の体液の調節機能が非常に関係しています。

5.エネルギー源になる。たんぱく質1gは4Kcalに相当します。

たんぱく質の摂り方については、人口の高齢化と平均寿命の延伸を背景に、出来るだけ自立した生活を目指し、要介護状態になるのを遅らせたい。フレイルとサルコペニアの予防には、たんぱく質摂取量が強く関連するため、たんぱく質の重要性が注目されています。たんぱく質として摂取したい量は、1.0g~1.2g/㎏/体重/日。1日にたんぱく質として60~70g位になります (食品の重量ではない)。 食品中のたんぱく質の量の数え方は、卵(1個):納豆(40g):牛乳(180ml)ヨーグルトは、たんぱく質が同じ量で約6gと数えます。魚:肉はおおよそ重量の1/5がたんぱく質の量とする(脂肪が多い物の場合は少なくなる)。例:魚1切れ(70g):たんぱく質14g。肉(75g):たんぱく質15g。主食からのたんぱく質は、ご飯(100g)おおよそ2.5g。例:1食(180g)×3食=540gのたんぱく質14gとなります。

エネルギー産生比率とは、必要なエネルギーを栄養素に配分する方法を云います。
例:摂取エネルギー1800~2000kcalとすると ①必要なたんぱく質量を確保し、そのエネルギー量を計算する。摂取たんぱく質70g →約280kcalになる(エネルギー産生比率16~14%)。ここが一番重要なので、ここを押さえる。②必要エネルギーからたんぱく質によるエネルギーを除く。1800~2000-280¬=1520~1720kcal (炭水化物+脂質の量となる)。③摂取する炭水化物と脂質に分ける(炭水化物1g4kcal 脂肪1g9kcal)。脂質の適量は摂取エネルギーの20~30%(エネルギー産生比率25%とすると) 1800~2000kcalの25%=450~500kcal→脂質の量として50~56gになる。炭水化物の量は(1520~1720)-(450~500)=1070~1220kcal→炭水化物の量は270~300gとなる。

炭水化物の適量は摂取エネルギーの50~60%で、計算の結果エネルギー産生比率は59~61%となる。こういうようなエネルギー産生比率を基にして、糖と脂肪とたんぱく質のバランスを考えた食事がエネルギーから見た栄養素のバランスが取れた食事であり、しっかりした理論があります。〟

更に飯塚氏は、〝フレイルとサルコペニアの予防のためにたんぱく質の摂取が重要です。体重1㎏ごとに(1.0~1.2g/㎏/日)で、毎日摂取が必要です。おおよそ1日に平均60gから70g位必要。ただし、栄養素の量と食品の量とは違うということです。たんぱく質を何から摂るかというと、肉や魚、卵、大豆製品だけではなく、主食からもたんぱく質は摂れます。60~70gのたんぱく量をどういう風に摂るかということで、大体の目安を覚えておくととても便利です。食品100gというのはどの位の量かなということも頭に入れておきます。たんぱくの摂り過ぎというのも腎臓に負担がかかってきます。私たち日本人の食生活は、お米を中心とした食文化ということで、これを上手に利用していくことが大事です。〟等話し、〝たんぱく質を主にして、見ていかないといけません。私たち1日3食、食事を食べて、それが消化、吸収されます。どうやって体の中は保たれているのかというと、アミノ酸の臓器間輸送が問題になってきます。食事を減らしてもちゃんと体の中は補われている訳です。それは筋肉と肝臓が主になってアミノ酸のやり取りを行っています。私たちは絶食したってエネルギーが保たれているのは何故かというと、臓器間でアミノ酸を移動し、筋肉と肝臓は食間の血中アミノ酸濃度の維持に重要な役割を果たしているからです〟等、話した。

第44回健康指導講習会

〝毎日摂りたい10食品を上げますと、今日ここに野菜をお持ちしました。これくらいの量は食べられる筈なんです。朝・昼・晩3食に、野菜のおかずがついていれば摂れる量です。2食しか食べないとか、お昼はお蕎麦だけという人は、朝と夜にちゃんと食べていただかないといけない。主食と主菜と副菜を摂るのが大切。季節のものを摂ること。海藻類やきのこ、果物、穀類、いも類、油脂(油を使った料理)を摂る。上手に無駄なく冷凍食品なども使う。日本の食文化を考える。野菜類と合わせた料理は、世界でも非常に多く、殆どその地域の食材が入っています〟等々、栄養学の第一人者である飯塚美和子氏は締め括った。

〇その後、ディスカッションが行われ、終了した。(ディスカッションの内容は省略しました)。

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