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保険請求の手引き【第6回:療養費の支給基準 その5】

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医師がドクターバックを所持する看護婦(現在は看護師)さんを伴って、患家に赴かれているシーンは過去において当たり前のように拝見する機会がありました。

昨今その代替策として、訪問看護や在宅医療と姿を変えて、医師による「往診」と云う形式自体が少なくなったように感じますが、読者の皆様はいかがでございましょうか?

今回は柔道整復師の先生方に認められる往療について、解説を申し上げます。

往療を行ない、算定するにも支給基準による規定があり、保険者は最近特に往療算定を厳しく審査する例が少なくないようですので十分なご理解をお願い致します。

第3   往療料

1往療は,往療の必要がある場合に限り行うものであること。

2往療料は,下肢の骨折又は不全骨折,股関節脱臼,腰部捻挫等による歩行困難等真に安静を必要とするやむを得ない理由により患家の求めに応じて患家に赴き施術を行った場合に算定できるものであり,単に患者の希望のみにより又は定期的若しくは計画的に患家に赴いて施術を行った場合には算定できないこと。

32 戸以上の患家に対して引き続き往療を行った場合の往療順位第2位以下の患家に対する往療距離の計算は,柔道整復師の所在地を起点とせず,それぞれ先順位の患家の所在地を起点とするものであること。ただし先順位の患家から次順位の患家へ行く途中でその施術所を経由するときは,第 2患家への往療距離は,その施術所からの距離で計算すること。
この場合,往療距離の計算は,最短距離となるように計算すること。

4往療の距離は施術所の所在地と患家の直線距離によって算定すること。

5片道16kmを超える往療については,当該施術所からの往療を必要とする絶対的な理由がある場合に認められるものであるが,かかる理由がなく,患家の希望により16kmを超える往療をした場合の往療料は,全額患者負担とすること。

6同一家屋内の2人目以降の患者を施術した場合の往療料は,別々に算定できないこと。

往療を実施する場合、単に柔道整復師の判断だけでの実施は認められません。

且つ単に患者の希望により実施することも認められていません。 「歩行困難等真に安静を必要とするやむを得ない理由により患家の求めに応じて実施する」と云う規定がなされています。歩行困難とは、下肢の骨傷(骨折・不全骨折)や股関節脱臼や腰部捻挫によって歩行が困難である場合をいいます。その上で安静を必要とする理由があり患家の求めがあった場合に算定ができるとあります。つまり「①往療を必要とする歩行困難等安静を要するやむを得ない理由がある ②患家の求めがある」これらの要件を満たし、患家に赴いて治療(施術)をした場合にのみ認められることになります。

2戸以上の患家に対して引き続いた往療の場合の距離計算は、それぞれの先順位の患家の所在地を起点としなければなりません。往療の距離については、当該の施術所(整・接骨院)所在地と患家の直線距離によって算定しなければなりません。

偶然に、同一の家屋内に2人目以降の患者を治療した場合の往療料は、それぞれ別々に算定することは認められません。

7難路加算における難路とは,常識で判断されるもので,第三者に納得され得る程度のものでなければならないこと。

8暴風雨雪加算における暴風雨又は暴風雪とは,気象警報の発せられているものに限られ,気象警報の発せられない場合は原則として認められないこと。

9夜間加算については,以下によること。

(1)夜間の取扱いについては,おおむね午後6時から翌日の午前 6 時まで,又は,午後7時から 翌日午前7時までのように,12時間を標準として各都道府県において統一的に取扱うこと。

(2)後療往療の場合は算定できないこと。

10往療に要した交通費については,患家の負担とすること。往療時に要したバス,タクシー,鉄道,船等の交通費は,その実費とすること。自転車,スクータ一等の場合は,土地の慣例,当事者聞の合議によるべきであるが,通例は交通費に該当しないこと。

難路加算については、いわゆる常識判断の上に第三者による納得が得られるレベルでなくてはならない事から、通常は算定されることは少ないであろうと判断されます。

車馬料として公共交通機関的な交通費は患家の負担。柔道整復師の先生方が自家用バイクや自転車を利用される場合には患家との合議を得る必要があります。

これら往療と規定される算定項目についても、患者の身体運動器損傷の重傷例を想定し、患者保護を第一として柔道整復師が有する医師の代替機能をも含めた結果として、保険治療が認められていると考えることが重要です。往療の概念を逸脱させて単に患者サービスとして実施することは認められる事ではありません。

往療の必要がある場合において、当該の受診者が内科的疾患の受診のために介護保険制度や家族によるやや無理な介護のもとに、やむなく通院された事実を持って単に柔道整復師の往療を否認する場合や、タクシー等による通院が可能だなどと見解を示す保険者もあるようです。これらは明らかに保険者判断の誤りであろうと捉えることができます。

いずれにしましても、往療を適正に必要とする場合、「柔道整復師の先生方は患者の住まいにまで赴いて柔道整復による治療行為を行なうことが認められている」資格者であることを正しく認識頂きたいと願います。

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