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柔道整復師と介護福祉【第48回:外国人介護士の受け入れに関する調査】

柔道整復師と介護福祉 特集

介護職の8割「外国人介護士を受け入れても、人材不足は解消しない」。
外国人介護士の受け入れに関する実態調査

介護職の養成学校【東北福祉カレッジ】を展開する株式会社中川は、養成学校の卒業生、介護系のSNS(Facebook、Twitter)の読者2500名を対象に、「外国人介護士の受け入れ」に関する調査を実施。この調査に基づき、日本の介護職の考え方が浮き彫りになりました。

外国人介護士の背景について

EPA(経済連携協定)やODA支援(技能実習生制度)により、日本で働く外国人介護士は年々増加傾向にあります。
2015年度では、東南アジア三ヵ国(インドネシア・フィリピン・ベトナム)で合計568人の外国人介護士が来日。410人であった2014年度から、受け入れ数は確実に増加傾向にあります。

厚生労働省によると、2025年に国内で不足する介護職の数は約38万人、2035年では68.8万人不足と推計されています。外国人介護士の受け入れは、人材不足解消の期待に応えて、需要は今後ますます進んでいくことでしょう。
しかし、人材不足課題解決の反面、外国人介護士の受け入れについて、「トラブルが発生するのでは」と懸念する声も少なくありません。そこで外国人介護士と一緒に働くことになる現場職員に、「自分の職場に外国人介護士が入職してくること」について調査が行われました。

男女比はほぼ半々の結果が伺えます。
年代比別では、男性が20代:11.9%、30代:50.0%、40代:21.4%、50代:14.3%、60代2.4%。
女性が20代:16.7%、30代:26.2%、40代:40.4%、50代:16.7%。

属性では、「介護職員」が60.5%、「主任・リーダー」が19.8%、「管理者」が11.1%、「経営者」が8.6%の分布となっています。

現場での連携では、一緒に働いている」が24.7%、「一緒に働いていない」が75.3%となり、このデーターの理由として、現況の制度ではEPAによる外国人介護士の受け入れは、公募制の為、特別養護老人ホームに入職傾向になり、実際8割近い日本人介護職員は接する機会がないと推察できます。

この調査結果では、いかに現場に職員不足であるかが露呈されていると推測します。

「外国人介護士の入職に賛成」と回答した方は、なぜ賛成ですか?

  • 「様々な価値観が身近に感じられ視野が広がる気がするから」(20代・女性)
  • 「それなりの意欲のある方なら消極的賛成。基準を満たしていても人手は足りなすぎる」(30代・女性)
  • 「どんな職種にも外国人はいるのに、介護職が何故純血主義なのか、そちらのほうがわからない」(40代・男性)
  • 「利用者にも外国人がいるから」(30代・男性)
  • 「以前勤めた特養に、フィリピンの方が二人いた。言葉の問題は多少あったが、ケアの細やかさは、日本人よりも上と感じた」(40代・男性)

「外国人介護士の入職に反対」と回答した方は、なぜ反対ですか?

  • 「以前中国のかたと働いたが、入居者に対する言葉がキツかった。皆そうではないと思うが…」(20代・女性)
  • 「外国人介護士ではその地方の方言などが分からず、利用者とのコミュニケーションに不安がある。また、少なくとも外国人介護士を入職させる前に介護士の賃金を他業種なみに引き上げるのが先だと考えるから」(30代・男性)
  • 「まず日本人の賃金を上げることが先決」(40代・女性)
  • 「安価な労働力の確保をしようとしているが、介護は身体介護だけでなく家事援助もあるので生活様式が異なる外国人労働者は適していないと思う」(30代・男性)
  • 「訪問介護は利用者様やご家族の理解が困難だと思われるため」(50代・男性)

外国人介護士を受け入れることで、職場や利用者さんにどのようなデメリットがあると思いますか?

  • 「利用者さんから差別的な発言・思い込みが出る可能性がある」(30代・女性)
  • 「OJTの長期化。言語学習の壁」(20代・男性)
  • 「外国人を下にみているスタッフや利用者と母国では優秀でハイクラスな外国人との軋轢」(40代・女性)
  • 「今の待遇のまま、受け入れたら反日思想を持たれる可能性が高い」(30代・男性)
  • 「言葉の壁や文化の違いなど、生活スタイルの違いで、職員間の連携が上手く行かず、結果的に事故、利用者の不利益につながるのではと思う」(40代・男性)

外国人介護士について、受け入れると「介護の質が下がる」という意見があります。その中で「介護の質」とは、何によって決まると思いますか?

  • 「利用者、一人一人に適した対応が出来るか、出来ないか」(20代・男性)
  • 「安定した雇用形態。その上に成り立つ介護技術。そして、利用者との相互のコミュニケーション」(30代・男性)
  • 「利用者にどれだけ信頼されているか。またはどれだけ利用者にとってどれだけ穏やかに生活できるか」(40代・女性)
  • 「介護過程の理解。根拠を持って介護を実践できる力。多様な方とコミュニケーションを図ることができ、一人一人異なる生活を理解し、利用者それぞれのQOLを高めるために力を発揮できること。など」(30代・男性)
  • 「やる気のない介護師に介護される方がよっぽど介護の質が下がると思うので、介護の質は、介護師本人のやる気と思い遣りを持って仕事に取り組むことが介護の質なのかなとおもっています」(40代・女性)

まとめ

これから益々日本の介護現場に増えていくであろう、外国人介護士に対する偏見がこの調査で伺えます。彼らの受け入れに対して、介護業界だけが鎖国的な空気でいるのはおかしいという考え方の風潮もありますが、やはり言語や文化の壁を不安に思う意見が目立ちます。文化観、宗教観は国際化が進む現代においてグローバル人材との協業は不可欠な課題です。

日本人も外国人も等しく働きやすい職場にするためには、現場の介護職がどのような努力や心遣いをするべきか検討が必要です。また、日本人が海外で日本式介護を展開する時期は早急に訪れると推測します。
医療・介護・予防に関わる専門職は、グローバル化に向けて対応が迫られていると共に、入管法の法整備においても必要性が感じられます。次回のコラムで追記いたします。

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