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柔道整復師と介護福祉【第1回:介護保険と柔道整復師】

2014/11/16
介護保険制度

介護保険法は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする(第1条)制度です。

日本の制度は、おおむねドイツの介護保険制度をモデルに導入されており、介護保険料については、新たな負担に対する世論の反発を避けるため、導入当初は半年間徴収が凍結され、平成12年(2000年)10月から半額徴収、平成13年(2001年)10月から全額徴収という経緯をたどっています。

 

介護保険制度の役割と特徴
1.
要介護者が本人や家族の所得や財産にかかわらず、要介護者本人や家族が望む必要で十分な介護サービスを介護事業者から受けられる「公平性を重視
2.
要介護者の家族を介護負担と介護費用負担から解放し、社会全体の労働力と財源で介護する「社会保障制度
3.
多様な事業者によるサービスを提供し、専門的サービス産業としての介護産業を確立する。
民間事業者を含めた自由競争
4.
医療と介護の役割分担を明確化し、急性期や慢性期の医療の必要がない要介護者を介護サービスにより介護し、介護目的の入院を介護施設もしくは在宅復帰させる「医療・介護連携

 

財源の確保
介護保険制度の財源
財源 負担率
公費(50%) 25%
都道府県 12.5%
市町村 12.5%
高齢者(65歳~)の保険料   21%
若年者(40歳~64歳)の保険料   29%

 

2012年介護保険制度改正

2012年4月から新しい介護保険制度がスタートしました。

介護保険制度は、制度施行後12年が経過しました。そして、サービスの利用者数が施行当初の約3倍となって400万人を超えるなど、高齢者の暮らしを支える制度として必要不可欠な制度です。しかし、今後の急速な超高齢化社会に伴い、1医療ニーズの高い高齢者や重度の要介護者の増加、2単身・高齢者のみ世帯の増加への対応、3介護人材の確保などが喫緊の課題です。このような背景から、これらの諸課題の解決に向け、新しい介護保険制度(介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律)が2011年6月22日に公布されました。

改正の趣旨は、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供する『地域包括ケアシステム』の実現に向けた取組を進めることにあります。地域包括ケアシステムとは、中学校に通学した馴染みがある距離感を基本として、多様な取組をスムーズに行うというものです。

 

改正の主なポイント
1.
医療と介護の連携の強化等
24時間対応の定期巡回・随時対応型サービスを創設
複合型サービスを創設
介護予防・日常生活支援総合事業(柔道整復師との関わりがある事業
2.
介護人材の確保とサービスの質の向上
3.
高齢者の住まいの整備等(サービス付高齢者専用賃貸住宅等の在宅復帰場所の整備)
4.
認知症対策の推進(オレンジプラン5カ年計画)
5.
保険者による主体的な取組の推進(保険者機能の強化)
6.
保険料の上昇の緩和

 

介護保険制度と柔道整復師の役割

介護保険制度の中で柔道整復師は、機能訓練指導員として生活行為の向上ならびに要介護状態にならないように資するための機能訓練の評価、指導をする専門資格を与えられました。この機能訓練指導員は、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あんまマッサージ指圧師に与えられた要件です。看護師は、医療ニーズに対して専門性が高いため、福祉施設では重宝されています。療法士は、各専門性を生かして、生活因子、環境因子をアセスメントし、生活行為の向上に対する専門性が高いといえます。このような多職種の中で現在、柔道整復師のライセンスを生かして、介護保険制度の分野で活躍されている方が多数存在します。

介護保険サービスにおける居宅系サービスで柔道整復師が参入するサービスとして、デイサービス(通所介護)、ヘルパーステーション(訪問介護)、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)、福祉用具貸与、小規模多機能居宅介護、ケアプランセンター(居宅介護事業)などが挙げられます。逆に参入しづらい居宅系サービスでは、訪問リハビリ、訪問看護、特定入居者生活介護、訪問入浴など柔道整復師のライセンスからかけ離れた業態と言えるでしょう。

居宅系サービスの通所介護事業で、柔道整復師を配置する場合、管理者として配置もしくは機能訓練指導員として配置されるケースが多く見受けられます。管理者として配置される場合、法人設立から経営まで兼務しながら地域貢献されている先生方が大多数を占めます。また、機能訓練指導員の場合、雇用される側として勤務している方々が大半を占めています。

従来本業として開業権がある、柔道整復師療養費制度の施術管理者として専従、常勤要件の機能訓練指導員を兼務することは、時間的な制約(接骨院の診療時間とデイサービスのサービス提供時間の人員配置の整合性)があるため合法的に営業することが困難になります。昨今は、同一平米上で接骨院とデイサービスを開業するフランチャイズが多数全国的に増えており、担当行政も監査指導時に、特に勤務体制表一覧、出勤簿の整合性と書類の不備に関する監査が非常に厳しくなっている実情もあります。

地域で開業している部分医療従事者の柔道整復師は、骨折、脱臼、捻挫、挫傷、打撲の急性、亜急性外傷に対する、運動器疾患に特化した専門職です。介護保険制度を持続可能な制度にするためにも、専門性の技術を生かし、一次予防(早期発見)、二次予防(早期介入)、早期生活機能復帰を地域で推進することは非常に大きな役割であると推測されます。

社会課題として掲げられている、高齢化に伴う社会保障費の増加(年3兆円増加)に対しても、専門ライセンスの機能性を活用して、介護分野で予防による地域健康福祉の後方支援団体としての役割が喫緊に必要とされています。

伝統医療として国民医療の一役を担う業界としても、介護保険分野における地域に必要な社会資源として、各専門職と連携しワンストップで医療と介護を繋ぐ架け橋になれる歯車に、柔道整復師は今、生まれ変わるときと言えます。

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