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柔道整復師と介護福祉【第38回:国民が受けられる公的介護保険】

2017/12/16
要介護になったとき、国民が受けられる公的介護保険について【8つの保険制度】

状態が急変し要介護もしくは要支援といった介護保険区分に認定された場合は、社会保障制度の介護保険サービスを利用することができます。
なぜなら、平成12(2000)年4月より、介護保険制度がスタートとしていて、原則として40歳以上の国民全員が公的介護保険制度に加入しているからです。
公的保険(社会保険)には、医療保険制度、年金保険制度がありますが、これらが「現金給付」という点に対して、介護保険制度はお金がもらえるわけではなく、介護サービスそのものが給付される「現物給付」となっている点が他の制度との大きな違いがあります。

 

介護保険制度の概要

介護保険制度は、65歳以上の人を第1号被保険者、40歳以上65歳未満の人を第2号被保険者と位置づけ、保障される範囲や保険料等が異なります。
65歳以上の第1号被保険者は、原因にかかわらず、要介護・要支援状態になったときに介護サービスを利用することができます。
保険料率は、所得状況に応じて原則6段階となっていて、全国平均は4,972円(平成24年~平成26年度)です。被保険者数や市区町村のサービス内容などによって異なるため、地域格差があります。また、3年に1回改定されることになっており次回改正では所得に応じて2割、3割負担でサービスを利用される方が想定されます。
40歳から64歳の第2号被保険者は、加齢に伴う16種類疾病「以下 特定疾患」によって、要介護・要支援状態になった場合に限定して介護サービスを受けられます。
つまり、事故などケガによって介護が必要になっても特定疾患に該当しない場合は、介護サービスは受けられません。また、それぞれが加入する医療保険制度の算定基準に基づき保険料を設定し、一般の医療保険料に上乗せする形で一括して支払っています。共通項としては、介護が必要と認定された場合に、費用の一部を支払って介護サービスを受けることができる点です。

 

介護保険制度から受けられる8つの保険給付

介護保険サービスは、要介護・要支援認定の区分に応じて公的介護保険から給付される上限額(支給限度額)が決められています。要介護と認定された場合は「介護サービス」、要支援と認定された場合は「介護予防サービス」を利用することができます。
限度額以内の場合、費用の1割を負担します。限度額を超えた部分は全額自己負担「10割負担」となります。
ただし、一定以上の所得がある人は2割、3割負担になっています。一定以上所得者とは、以下の2つの条件満たしている場合です。

本人の合計所得金額が160万円以上の場合
収入から公的年金控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の所得金額
単身の場合
年金収入+その他の合計所得金額(給与収入や事業収入等から給与所得控除や必要経費を控除した額)が280万円以上
同一世帯に第1号被保険者がいる場合
年金収入+その他の合計所得金額が346万円以上

 

① 居宅介護サービス費(要支援:介護予防サービス費)

都道府県が指定する指定居宅サービス事業者から訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導など、居宅において介護(介護予防)を受けることができます。訪問介護、通所介護に関しては、日常生活総合支援事業「以下 総合事業」に順次移行しています。
平成30年4月から全市区町村、一斉開始になります。

 

② 地域密着型介護サービス費(要支援:地域密着型介護予防サービス費)

市町村が指定する指定地域密着型サービス事業者から定期巡回・臨時対応型訪問介護看護、複合型サービス等の指定地域密着型サービスを受けることができます。

 

③ 居宅介護福祉用具購入費(要支援:介護予防福祉用具購入費)

自宅において介護(介護予防)を受ける人が、入浴又は排泄用具といった特定福祉用具を、指定を受けた事業者から購入した場合、その費用が給付されます。
いったん全額を支払った後、自己負担額を差し引いた額が保険から給付されます。
同一年度(4月~翌年3月)につき10万円(給付は9万円まで)が限度額となります。

 

④ 居宅介護住宅改修費(要支援:介護予防住宅改修費の支給)

自宅の手すりの取り付けや段差解消等、小規模な住宅改修に要する費用が給付されます。
いったん全額を事業者に支払った後、自己負担額を差し引いた額が保険から給付されます。
同一住宅につき20万円(給付は18万円まで)が限度額となります。

 

⑤ 居宅介護サービス計画費(要支援:介護予防サービス計画費)

ケアマネージャー「介護支援専門員」は、自宅において介護(介護予防)を受ける人の心身の状態や希望等に応じた介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、確実に介護サービスが提供されるように各機関等と連絡調整等を実施します。
保険からの給付額は利用料の全額のため、無料となります。
次回改正時に、ケアプランに関しても自己負担が発生する予定です。

 

⑥ 施設介護サービス費

要介護認定を受けた人が利用できるサービスで、要支援認定の人は対象外です。要介護認定の区分に応じて、施設サービスにかかった費用の1割を負担します。
また、居住費、食事、日常生活費等の費用は原則自己負担となります。

 

⑦ 高額介護サービス費(要支援:高額介護予防サービス費)

1ヶ月における介護サービスの自己負担額が高額となった場合に、自己負担限度額を超えた部分について、請求すれば後日返金を受けることができます。同じ世帯に複数の利用者がいる場合には世帯で合計することができます。自己負担限度額は、住民税世帯課税者や非課税者かによって異なりますが、住民税世帯課税者なら、月4万円弱となります。
但し、自宅で介護サービスを受けている場合の福祉用具の購入費や住宅改修費などについても対象とはなりません。また、老人ホームなどの居住費や食費、差額ベッド代、生活費などを含むことはできません。

 

⑧ 高額医療合算介護療養費(要支援:高額医療合算介護予防療養費)

平成20(2008)年4月より新設された制度で、公的医療保険と公的介護保険の両方の自己負担額(高額療養費および高額介護サービス費の給付を受けることができる場合には、その額を除く。)が高額となった場合に、自己負担限度額を超えた部分について、請求すれば後日、公的医療保険から返金を受けることができます。
世帯内で同一の公的医療保険に加入していることが条件で、合算期間は毎年8月1日~翌年7月31日の1年間です。「健康保険の窓口負担」と「介護保険の利用者負担」が「高額介護合算療養費の自己負担限度額」に500円(支給事務に要する費用)を加えた金額を超えた場合、払い戻しされます。
給付の申請のためには1年間分の領収書原本の保管が必要となりますが、「高額療養費」と「高額介護サービス費」で還付を受けた上で、さらに超過分を払い戻してもらえる制度なので、利用することをお勧めします。

 

このように、日本では介護状態になったときに、介護サービスが受けることができる制度があります。ただし、高齢化の進行などで介護認定者数は増え続ける一方、便乗した形で介護給付費の増大は避けられません。
現状のまま社会保障費が増大すれば自己負担限度額などの制度が今後改悪される可能性もあります。私たち国民は、公的介護保険のみに頼りすぎず、並行して介護予防、予防医学に徹していかなければいけません。

 

 
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