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第9回関東地区保険者会議 開催

2013/02/16
患者照会

3つ目のテーマである患者照会について、本多氏は保険者と柔道整復師の認識に差があることを指摘した上で〝保険者は一体どういう目的で患者照会を行なっているのか聞かせていただきたい〟と意見を求めた。

つい最近、2か月連続で同じ人が同じ柔道整復師に、1か月に27日以上にかかったという事例があった。患者照会を出したが、会社を休んで療養したのでもう行きませんという返答だった。
患者照会はその請求が保険適用になるかどうかを見るための一環として行なっている。通院回数は関係なく、自分たちで作っている基準に引っ掛かる場合は通院回数が1回でも照会する。基準に引っ掛かるから行なうのであって、1回だから照会しなくて良いというのは間違っている。
初回の方には照会を出すようにしている。どういったものが保険適用になるかという事を知らずに掛かって、リピート化してしまう前に理解して頂きたいという趣旨で行なっている。

これに対し本多氏は〝照会を行なっている保険者は各々の基準によって照会を行なっていくのだろうと思うが、あたかも犯罪捜査のような文言を並べられると照会を受けた側もショックを受けてしまう。照会してはいけないのではなく、照会される側の心の痛みあるいは負担についても斟酌しながら、誰が見てもなるほどと思われるような照会をしていかなければいけない〟と照会の方法について言及した。

保険者は

最初にパンフレットを送って、日数が多い方、定期的に数ヶ月通っているという方に関しては照会する。しかし長くかかっている人は接骨院の先生と仲が良く、立派な回答が返ってくるので手の出しようがない。
最初は、内容ではなくてどういう理由で柔道整復にかかったか、今はどうなっているのかを聞く。そこに正しいかかり方のパンフレットを送って、それで3か月も4か月も10回位行くような人に対しては詳しい照会を行なう。

と、それぞれ行なっている照会方法について述べ、保険適用対象を啓蒙する意味もあることを主張した。

なかには〝一番大きな問題は、保険者・施術者側の信頼関係だ。被保険者から保険料をもらうということを考えた場合、給付する事が前提となる。給付をするために照会をかけるというスタンスから始めるべきではないか〟とする保険者もあったが、本多氏は〝しかしそういった環境を柔道整復師は一方的に壊してしまった。柔道整復師の中には芳しくない方もいるが、芳しい人も勿論数多くいるということを示し、療養費は本来払ってもらうべきものという起点に戻ってこの制度を再構築したい〟とした。

 

審査基準

本多氏は第三次案を作った背景を説明した後、審査基準について、現実に合っていて十分に機能が発揮できるものを作り上げていくべきだとした上で〝柔道整復師の施術対象は骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷の5傷病とされているが、これに加え、それに類似する症状を呈している患者が現にいる。その類似する症状について柔道整復師が施術を行なうという場合に、部位別で請求するから問題がある。部位別請求ではなく包括請求に変えるべきだと私は考えている。その中で、まず類似する症状に対して傷病名をどうするかという問題があるが、傷病名が付けられないのに無理に書く必要はないのではないか。現に症状があるのだから、その症状をしっかりと把握して療養費に当たるかどうかを的確に示す方が、遥かに生産的だと思われる〟と述べ、保険者の意見を求めた。

この提案に対しては、

確かに意味のない傷病名を付けて請求するのはおかしい。それならばもう少し具体的な施術内容を記入して請求してもらった方がいい。
枠を広げてあげないと、やはり傷病名を付けるには限界はあると思う。痛いものに対しては療養費を支給すべきで、制度がおかしいのかなと感じる。

と一定の理解を示す保険者もみられたが、一方で

我々保険者は柔道整復療養費という制度で決められた枠の中で物事を進めているだけであって、「制度が悪い」「自分達は施術しているのだから請求ができる」という言い分は話にならない。
確かにどこか痛みがあるから通院しているのだとは思うが、枠を広げてしまうともっと不正な請求が増えてしまうのではないかという不安もあり、非常に難しい問題。
法的に整備されていなければ保険者としてはどうしようもない。業界全体の方向性が纏まらなければ、いくら議論しても実現には何年もかかってしまうのではないか。

と厳しい見方をする保険者もあった。

そこで本多氏は〝傷病名に関連して、治療効果が出ているのか出ていないのか、いつ頃までに治るのかを保険者や患者に対して示す「計画治療」というものを提案している。計画はあくまで予定であり変更の可能性もあるが、変更する場合にはその理由を書いてもらう。それを患者に示しておけば照会をかけても患者は答えやすくなるだろう〟と、「計画治療」の計画書に治療効果の有無や治癒時期の目安などを明示することで、療養費支給対象の枠の拡張で懸念される漫然とした治療の増加を、ある程度食い止めることができるのではないかと述べた。

これについては、

今その人の治療がどの段階にあるのか、それともまた新たに関連する場所に負傷が出てきたのかという流れは現在のレセプトからは読み取れない。治療が計画的に行なわれるようになれば助かるし、できるのであればとても良い制度だと思う。
計画治療になれば、確かに保険者としては安心して支払えるという面はある。実態を把握するにも役に立つだろう。

と多くの保険者が賛同していた。

 

最後に本多氏は、〝制度は変えることは難しいが、最後はやはり保険者と施術者側の合意だと思っている。ある程度の合意に達していれば上手く運用していけると考えておりますので、これから色々な議論を参考にして保険者側の皆さんの想いも吸収しながら、施術者側と保険者側の間で合理的な枠組みづくりを進めていきたい〟と今後につなげた。

 

地道な会議を重ね、改革案は現実味を増してきている。多くの保険者の賛同が得られるようになった今、柔道整復業界全体が同じ方向を向き、動き出す必要があるように感じられる。柔道整復師の方々には、是非先を見据えて行動を起こしていただきたいと思う。

なお改革案は、さらに柔道整復師・保険者双方からの意見を取り入れ、本年6月6日(木)に開催される『登録柔道整復師制度実現の為の協議会(総括会議)』にて発表される予定となっている。

 

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